現代の水上戦闘の主役といえば、なんといっても対艦ミサイルです。
ドイツ空軍の爆撃機が投下した誘導爆弾フリッツXが、枢軸同盟を離脱したイタリアの戦艦ローマを一撃で沈めたのは、第二次世界大戦中の1943年のことでした。
無線誘導の滑空爆弾であったこのフリッツXが、対艦ミサイルの元祖です。
以降、水上戦闘艦にとって誘導弾は深刻な脅威となり、戦後、対艦ミサイルの開発を熱心に行ったのがソ連で、ソ連は強力無比なアメリカ空母部隊に対抗するため、航空機に代わる新たな兵器を必要としていました。
1967年、エジプトのミサイル艇から発射されたソ連製対艦ミサイルが、イスラエルの駆逐艦、エイラートを撃沈、この出来事は、全世界の海軍に強い衝撃を与え、以後各国で対艦ミサイルの装備と対策に大きな力が割かれることになります。
この出来事によって、大型艦はすでに時代遅れとなり、ただの標的になったと考え、大型の艦艇を廃止した国の海軍もありました。
対艦ミサイル
初期の対艦ミサイルは、レーダー波や目視によって、発射側の航空機や艦艇から誘導を行いましたが、その後、自動で目標を探知するホーミングの技術が進化すると、発射したあとは外部の補助を必要としないファイア・アンド・フォゲット(撃ちっぱなし)能力を有するようになりました。
最新の対艦ミサイルは、方位情報のみをインプットされ、GPS誘導あるいは慣性誘導にて発射されます。
発射する方位は、遠距離でのソナー情報や電波による探知を基準として決めることもあれば、推量により決めることもできます。
発射されたミサイルは一定時間慣性で飛行し、味方の航空機などから中間誘導を受けるものも、旧型のミサイルのなかにはありました。
ミサイルが一定距離を飛行したところでシーカー(探知装置)が機能し、レーダー波を放射してターゲットの探査を開始します。
そしてレーダー波を一番大きく反射するターゲットに対し突入、これが終末アクティブ・レーダー追尾と呼ばれるミサイル誘導方式です。
またパッシブ方式のミサイルもあり、これはレーダー波を照射しません。
この例としては、ターゲットから放出されている赤外線や警戒レーダーの電波を検知して追尾するもの、内蔵されたCCDを通じて赤外線画像または光学的画像を目視して操作員がターゲットをロックオンするものなどがあります。
対艦ミサイルは、巡航飛行ないしは弾道飛行を行い、巡航飛行は、ほぼ決められた高度を維持しながら飛行します。
なかでも「シースキマー」と呼ばれるものは、海面すれすれを飛行し、速度は小さいですが、低空接近するために探知されにくいのが特徴です。
弾道飛行は、ミサイルが発射プラットホームからターゲットに向かって放物線を描くもので、レーダーには探知されやすくなりますが、高速降下により迎撃を難しくします。
代表的な対艦ミサイルとして、フランスの「SM39 エグゾセ」は射程50km・弾頭165kg、中国の「C802」は射程48km・弾頭150kg、アメリカの「トマホーク」は射程400km・弾頭454kg、ロシアの「P270モスキート(SS-N-19)」は射程100km・弾頭150kg、日本の「93式空対艦誘導弾」は射程170km・弾頭225kgでいずれも超低空を飛行します。
魚雷
魚雷は魚型水雷の略称であり、水中を高速で突進し、水中爆発により艦船を破壊する一撃必殺の兵器です。
水中で爆発が起きると、衝撃波とともにバブルパルスと呼ばれる圧力波が発生します。
これは比較的構造の弱い艦底に致命的な損傷を与えます。
1866年に圧縮空気でピストンを動かす低速の魚雷が初めて開発されました。
高圧空気と燃料を爆発させて生じたガスをシリンダーに送り、ピストンを動かす熱空気型の魚雷が登場したのは第一次世界大戦前で、速力は30ノット、射程は約4kmに延びることとなります。
さらに第二次世界大戦のころになると、速力は45ノット、射程は10kmにも達するようになりました。
熱空気型の魚雷は排気が気泡を生じさせ、水面に航跡が残ってしまうのが欠点でした。
これを改良し、空気の代わりに酸素を利用するのが酸素魚雷です。
酸素はすべて燃焼に使われるため排気を出さず、しかも燃焼効率が良く射程も延びました。
しかし、酸素が爆発するおそれがあり、併せて操作も難しく、第二次世界大戦時の日本や戦後の旧ソ連、ロシアを除いて普及はしませんでした。
第二次世界大戦中に登場した電気式魚雷は、電池でモーターを動かすため排気は出しませんでしたが、出力が弱いという弱点があり、戦後においては熱空気式と電気式を中心に開発が進みました。
クローズド・サイクルを採用した熱空気式では排気を出さなくなり、電池の性能向上により電気式では出力が増しています。
また、200ノットに達する特殊なロケット魚雷シクヴァルも登場、これにはスーパーキャビテーションと呼ばれる現象が利用されています。
魚雷の信管には触発式と磁気反応式があります。
磁気反応式信管は、艦艇の直下で爆発し、キール(竜骨)を破壊することで場合によっては艦船を真っ二つにするほどの大ダメージを与えることが可能です。
当初の魚雷は誘導装置を備えておらず、慣性のみに頼っていましたが、敵艦の音を目標にして進む音響ホーミング魚雷が第二次世界大戦時に開発されました。
現在では、アクティブ/パッシブ・ソナーを搭載したものや、有線で誘導するものなどが存在し、その精度は大きく向上しています。
潜水艦が装備する魚雷は大型のもので、口径は500~600mmほどあり、潜水艦が搭載可能な魚雷の数は、アメリカのヴァージニア級で最大38本ですが、トマホーク巡航ミサイルも同時に搭載するため、実際に搭載する魚雷の数は20本ほどとされています。
短魚雷と呼ばれる魚雷は、小型軽量のもので口径は300~400mmとなっており、対潜ミサイルの弾頭やキャプター機雷の弾頭として使用されるほか、対潜用として水上艦や航空機にも搭載されます。
以下、代表的な魚雷をいくつか紹介します。
アメリカの「Mk48ADCAP」は速度60ノットで射程27km・弾頭重量300kg・推進機関はクローズドで誘導方式は有線とソナー、「Mk50短魚雷」は速度55ノットで射程20km・弾頭重量44.5kg・推進機関はクローズドで誘導方式はソナーです。
ロシアの「ET80A」は速度45ノットで射程11.5km・弾頭重量272kg・推進機関は電気で誘導方式は有線とソナー、「シクヴァル」は速度195ノットで射程10km・弾頭重量210kg・推進機関はロケットで誘導方式はGOLIS自動慣性誘導となっています。
機雷
機雷は海底や水中に設置され、航行してくる艦船が接触あるいは接近して感応すると爆発し、その艦船にダメージを与える兵器です。
爆薬と起爆装置などを円筒または球形の容器に入れた単純構造のものから、艦船を自動ホーミングで攻撃する魚雷内蔵のものまでさまざまなタイプがあります。
機雷は、港湾の出入口や海峡などに多数を敷設し、航行する艦船を破壊したり、その行動を妨害する目的で使用されます。
日露戦争においては、旅順港の周辺海域を中心として敵の艦船を狙った機雷が本格的に用いられ、両軍ともに主力艦が撃沈されるという大損害を被りました。
その後、あまり知られていない事実として、機雷はシーレーンの破壊を目標とするようになります。
第一次世界大戦では24万発、第二次世界大戦では70万発の機雷が使用されたといわれています。
第二次世界大戦の当時、アメリカは潜水艦によって日本のシーレーンを破壊しましたが、さらにB-29爆撃機により日本の沿岸に1万発以上の機雷を投下し、沿岸での海上輸送を完全に麻痺させ、125万トンの船舶が被害を受け、多くの港が機雷により使用不能となりました。
ベトナム戦争では、アメリカは北ベトナムの物資輸送を妨害するために30万発の機雷を河川において使用したほか、北ベトナムのハイフォン港をおよそ1万発の機雷で封鎖しました。
この結果、機雷は敵の軍艦を狙う戦術的な用法のみならず、戦略的にも有効な兵器であることが認識されたのです。
近年では、ペルシャ湾岸から世界に原油を運ぶために多数のタンカーが航行するホルムズ海峡の封鎖がたびたび問題となりました。
こういった場面においても、封鎖の手段に機雷が用いられる可能性は、決してゼロとはいえないでしょう。