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戦闘用ヘルメットの変遷

戦場は危険だらけで、いつ銃で撃たれて命を落とすか分かりません。そのため、プロテクターなどの装備で体を覆い防御しますが、最も重要とされているのが、頭部を守るヘルメットです。

頭部の保護は工事現場からバイクライダーなど、あらゆる分野で使われていますが、現代の戦場においてヘルメットが担う役割には、どのようなものがあるのでしょうか。

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頭を守る戦闘用ヘルメット

M1917ヘルメット

古来よりヘルメットは、兵士が身を守るための防具として、重要視されてきた伝統的なプロテクターの一つです。

頭へのダメージは他の体の部位と比べても、とくに致命傷を負いやすいため、重点的に守る必要があると考えられてきました。

爆風による破片が頭に直撃するのを防いだり、爆発などの影響から頭へのダメージが小さくなるよう、衝撃を吸収したりと、ヘルメットは多くの役割を担っています。

現代の兵士も、戦闘中はヘルメットの着用が必須で、多くの場面でヘルメットが銃弾から頭部を守るケースも多々見られます。

遠距離の狙撃や拳銃弾など、比較的威力の低い弾丸であれば、着弾しても衝撃を受けるだけで直撃による死を免れることができます。

流石に至近距離からのライフル弾の着弾では荷が重いでしょうが、それでも生存の可能性を大きく引き上げてくれる頼れるアイテムであることには変わりありません。

素材は鉄から強化繊維へ

M1ヘルメット

現代、使用されている戦闘用ヘルメットは、樹脂と炭素繊維などを配合した、強化繊維素材を複層に重ね合わせる構造が一般的です。

一昔前に使用されていた鉄製のヘルメットは、強度は比較的優れていたものの、銃弾に対する防御力に難があり、現在では使われることは無くなりました。

ケブラー繊維(アラミド繊維)やスペクトラといった繊維素材を配合して作られた樹脂製のヘルメットは、防御力にたいへん優れているため、現在、多くの国の軍隊で採用されています。

これらの実物のヘルメットは、サバゲーで使われているレプリカヘルメットとは比べ物ならない強度がありますが、たいへん重いためサバゲーには向きません。

M1ヘルメット

ですが、もし実物の戦闘用のヘルメットを触る機会があれば、ぜひ実物の重量感を味わってみてください。

実物のヘルメットの魅力に取りつかれ、欲しくなったときは10万円を超える高価なモデルがほとんどですが、日本でも購入することができます。

本格的な実物装備でコスプレしてサバゲーを楽しむのであれば、一つ持っておくのも一興の余地はあるでしょう。

米軍の戦闘用ヘルメットの変遷

戦闘用のヘルメットは、アメリカ軍で40年以上使われてきたM1ヘルメットの後継機種のPASGTヘルメットから強化繊維を樹脂で固めた素材を用いることで、強度を向上させるようになりました。

その後、PASGTの後継であるACH~FASTヘルメットまで2000年代に入り、戦闘用のヘルメットは急速な進化を遂げています。

名称期間素材備考
M1917ヘルメット
M1917 Helmet
1917年~1941年鋼鉄製ブロディヘルメット
M1ヘルメット
M1 helmet
1941年~1985年高マンガン鋼
(中帽)繊維強化樹脂
PASGTヘルメット
Personnel Armor System Ground Troops Helmet
1983年~アラミド繊維強化樹脂フリッツ、Kポット
8470-01-092-7528 etc.
MICHヘルメット
Modular Integrated Communications Helmet
2001年~
(米陸軍、特殊作戦用)
アラミド繊維強化樹脂MSA、Gallet、Gentex etc.
ACHヘルメット
Advanced Combat Helmet
2002年~
(米陸軍、空軍)
アラミド繊維強化樹脂ArmorSource、Gentex
8470-01-476-2521 etc.
LWHヘルメット
Lightweight Helmet
2003年~
(米海兵隊、海軍)
アラミド繊維強化樹脂BAE、Gentex
8470-01-559-2874 etc.
FASTヘルメット(バリスティック)
Future Assault Shell Technology helmet
2009年~UHMWPE、スペクトラ等Ops-Core(Gentex)
8470-01-599-7090 etc.
ECHヘルメット
Enhanced Combat Helmet
2013年~UHMWPE、スペクトラ等3M(Ceradyne)
8470-01-591-4438 etc.

※ FASTヘルメットにはノンバリスティック(非防弾)のタイプもあります。

※ アラミド繊維には、Kevlar 129 (ケヴラー129) や Twaron (トワロン)があります。

※ UHMWPE(Ultrahigh Molecular Weight PolyEthylene) は超高分子量ポリエチレンのこと。

※ スペクトラ繊維(Spectra fiber)は、Honeywell社が開発したポリエチレン繊維で、アラミド繊維より強度は40%強力です。

現在のヘルメットは?

ACHヘルメット

世界各国で開発されている戦闘用ヘルメットですが、今日の軍隊で主流となっているのは装備が拡張可能なレールシステムが採用されているヘルメットです。

OPS-COREタイプと呼ばれるこれらのヘルメットは、耳まわりが開放的で、かつレールマウントが取り付けられており、様々なアクセサリーを装着することができます。

2000年代に活躍していたACHヘルメットと、2010年代以降急速に普及していったOPS-COREタイプの一種、FASTヘルメットを比較すると、違いがよくわかります。

ACHは耳元までプレートが覆い尽くしており、つるんとした球形が目立つ一方、FASTヘルメットは耳元が開き、ゴツゴツとしたマウントが取り付けられています。

FASTヘルメット

多くの兵士を動員する大規模な戦闘が減少し、極地での少人数の活動が増えた現代戦においては、兵士一人あたりの装備品の数が依然と比べて格段に増えています。

装備を効率よく運用し、軽快に動き回るため、ヘルメットのハイテク化は必須となっています。

またカスタマイズにより、あらゆる用途に使うことができるニーズに応えたヘルメットが、OPS-COREタイプの一種であるFASTヘルメットなのです。

カスタマイズ性の高さと、従来のヘルメットとしての防御力はそのままに、なおかつ洗練された小型デザインを維持しているところに、現代の技術力の高さが伺えます。

おわりに

FASTタイプと同様のレールマウントを装備したヘルメットの使用例

歴史を振り返ると、戦争に使われた武器の進化には目を見張るものがあります、ヘルメットのような防具の進化も近年、大幅なアップグレードが加えられてきました。

現代ではFASTヘルメットのような多用途で機動力に優れたヘルメットが好んで使用されており、コレクターに人気を博しています。

一つ一つの装備が生まれてきた背景を探ることで、物を見る目が変わったり、愛着も湧いてくるのではないでしょうか。

※ 写真はFASTタイプと同様のレールマウントを装備した使用例

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