東京マルイが発売しているH&K PSG-1はドイツのヘッケラー&コッホ社が、対テロを目的とした特殊部隊向けに開発した、セミオート方式のスナイパーライフルです。
モデルとなっているH&K PSG-1はH&K社の小銃G3 SG/1をベースに、厳選されたパーツを熟練の銃器職人たちが手作業で組むことにより、セミオート方式でありながら高い命中精度を実現しました。
そもそも、なぜ本来スナイパーライフルには向いていないセミオート方式を採用したかというと、1972年9月に発生したミュンヘンオリンピック事件(実行犯達の名称から黒い九月事件と呼ばれることもあります)にその原因があります。
この事件では当局の不手際に加え、装備、狙撃に携わる人員の不足などから、多くの犠牲者が出してしまうという結果になってしまいました。
この事件を機に、当時の西ドイツ政府は高い精度を持ちながら、速射性能のある銃(=セミオート方式のスナイパーライフル)の必要性を感じ、銃器メーカー各社に対して設計を依頼しました。
この無茶振りともとれる西ドイツ政府の要求に対し、H&K社はPSG-1という答えを出す形で要求に答えました。
余談ですが、当時のセミオート方式のスナイパーライフルでは他にもワルサー社の開発した「WA2000」などが存在します。
H&K社のPSG-1と、ワルサー社のWA2000のどちらかを採用するということになりました。
どちらも一挺あたりの価格が約7000ドルと非常に高価だったのですが、最終的にはPSG-1が選ばれました。
WA2000が選ばれなかった理由として価格が高い点が理由として挙げられていますが、ほぼ同一価格帯のPSG-1が選ばれた理由については不明になっています。
全長が1208mmと非常に長く、発売当時から東京マルイの製造、販売しているトイガンの中でも最大クラスであり、小規模ながらもブローバックメカを搭載している、箱出しの時点でスコープを標準装備しているなどの特徴があります。
価格も次世代電動ガンなどに匹敵する程高額と比較的高価なモデルです。
動作ソースはバッテリー駆動による電動ガンですが、モデルとなっている実銃のPSG-1を再現した、セミオートのみの構成になっています。
電動ガンのメリットである安定したフルオートが使用できない点がありますが、セミオート用の専用メカボックスを採用されているため、通常の電動ガンのセミオートよりもトリガーレスポンスが良い利点があります。
マルイ製PSG-1最大の特徴である、ver.4メカボックスはセミオート専用のメカボックスで、ベースはAK47などに使用されていたver.3メカボックスですが、PSG-1用に大容量のシリンダーとピストンを装備し、セミオート射撃のレスポンスを高めるために、ピストンを後退位置で待機させるためのシステムを導入している、などの違いがあります。
ver.4メカボックスは通常の電動ガンではセミオート時、トリガーを引く、ピストンが下がり、解放されて発射というプロセスをたどるのに対し、予めピストンを後退させておくため、トリガーを引く、ピストンを解放し発射、ピストンを後退という一部が逆転し、トリガーを引いてから発射されるまでの時間が短くなるようになっています。
一方でデメリットとして、燃費が通常の電動ガンと比べると、非常に悪い点があります。
その他の特徴として、発射時にダミーのボルトが後退するブローバック要素があります。
これ自体には外見的な意味しか無い上、燃費も悪くなるため、サバイバルゲームで使用する場合には、敢えてオミットしているユーザーも多いそうです。
標準で装備されているスコープはタスコ製の4倍固定、対物レンズ径が40mmのトイガンに使用するものとしては、ごく一般的なものです。
対物レンズ側にはプラ製のレンズカバー、接眼レンズ側にはアイピースとフォーカスダイヤルを装備しています。
レティクルは一般的なクロスヘアで、エレベーションとウィンテージはダイヤル式で、工具無しの手回しで調整可能になっています。
スコープ自体が、レシーバー上部にネジで直接固定されているため、スコープそのものの細かな位置調整が出来ませんが、一方で外してしまっていて、つけたときに位置がズレる、といったこともありません。
ちなみに側面にダイヤルが付いていますが、これはダミーパーツで回転するのみです。
マガジンはPSG-1では装填数15発のG3系ショートマガジンが装備されています。
マガジンフォロアーが長めになっているため、装填した分のBB弾は全てしっかりと給弾されます。
マガジン自体はG3系共通のため、500連マガジンや70発装填のノーマルマガジンなども使用可能です。
前述した通り燃費が悪いうえ、プローン射撃を行う場合には下方向に長い通常のG3系マガジンは、結構邪魔になってしまうため、サバイバルゲームで使う場合には、PSG-1用の15連マガジンを複数携帯し、サイドアームで電動ハンドガンなど、フルオート可能な電動ガンを持つといった方法を取ったほうがいいかもしれません。
可変HOPはG3系共通のバレル同軸のダイヤル式のものになっています、コッキングレバーを最大まで引き、そこで上へ捻ると溝にはまりロックされ、ダミーボルトが後退し調整ダイヤルが現れるという形になっています。
トリガー周りは基本的にはG3とほぼ共通ですが、グリップは木目調プリントをされ、ハンドレストを装備し、トリガーにはトリガーシューを装備しています。
ハンドレストとトリガーシューは、上下にある程度調整可能になっています。
また、ピストンを後退位置で待機させる構造上、未使用時などにそのまま放置しないよう、強制的にピストンを解放するためのスイッチが、トリガー根元に付いています。
ストックはチークパッドと、バットストックの調整が可能になっています。
また、バットストックを回転させることにより、ストック内部のバッテリー収納スペースの蓋が露出、これを開くことによりバッテリーの交換が可能になっています。
使用するバッテリーはミニバッテリーか、AKバッテリーの使用が可能です。
実射性能は電動ガンとしては最長クラスの590mmのインナーバレルと、大容量のシリンダーを装備しているためか、他のマルイ製の電動ガンよりもわずかに初速が高め(高めと言っても規制値の範囲内)になっており、非常に素直な弾道でまっすぐに飛んでいきます。
専用メカボックスのおかげか、トリガーの反応も良く、精度の高さと相まって、PSG-1のセミオートスナイパーライフルという特徴をよく表現していると思います。
欠点としては、燃費の悪さと剛性面での不安があります。
前者はブローバックシステムの解除と、バッテリーの交換などである程度解消することが出来ます。
後者については他社製品の強化スリーブを装備するなどのカスタムが必要になります。
以前はスナイパーライフルのみ、僅かにパワー制限が緩くなるルールを採用しているフィールドもありましたが、現在では法規制により種類に問わず、規制値以内に収めるようにルールを徹底していることもあり、スナイパーライフルがゲームで優位に立つということがなくなり、スナイパー自体が非常に少なくなっていますが、それでもボルトアクションには出来ないセミオート射撃という利点があるため、スナイパーをやる人にとっては依然として心強いアイテムの一つだと思います。
非常に長い、重い、首周りが弱いためぶつけたりすると、曲がる可能性が高いなどのデメリットがありますが、このデメリット自体はカスタム次第で対応出来るため、カスタム好きなユーザにはあまり気にならない点だと思います。
一方で箱出し状態でも長い時間放置したりすると、僅かに首周りがヘタる可能性があるため、箱出し状態で使うお座敷シューターには少し厳しい点があるかなと感じます。