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戦闘用船舶の種類と歴史

船一般を表す言葉として「船舶」というものがありますが、一方で「艦船」という言葉も聞かれます。

艦船」という言葉は、戦闘用の軍用船と民間船などの非戦闘船を区別する必要がある時に用いられているようです。

」という言葉は「いくさぶね」と訓読し、もともとは上下に床を施し、四囲に盾としての板を張り巡らして矢石を防ぐことができるようにした、戦闘用の船舶のことと言われています。

そのためか日本では戦国時代に重防備を施した安宅船のようなものが登場するまでは、「」は存在しないか一般的ではなく、専ら「軍船」と呼ばれてきました。

幕末に入ると軍艦奉や、軍艦操練所のように、公式な呼称として軍艦という言葉が広く使われるようになります。

以降日本では軍に属する戦闘船舶のことを「軍艦」と呼ぶことが一般的になっていきました。

また「艦」や「艇」という言葉もありますが、これらは船の大きさによる呼び分け方です。

絶対的な基準はありませんが、現在の海上自衛隊では排水量1000トン程度を以て「」「」の区別がつけられているようです。

これらは総称して「艦艇」と呼ばれています。

英語においては船そのもののことは「シップ Ship」と呼ばれますが、船舶のような広い意味で使われる言葉としては「ヴィッセル Vessel」があります。

軍用艦艇の呼び名は様々で、「Warship」「Military Vessel」といったものがあります。

ちなみに「艦」と「艇」は「シップ Ship」「ボート Boat」という呼び分け方です。

字義が示すように、上下左右に防備を施した戦闘船「」は人間の戦争の歴史の早い段階から存在しました。

有名なものでは紀元前から使われ、映画「ベン・ハー」などでもおなじみのガレー船などがあります。

ガレー船は心臓部であるオールの漕ぎ手を攻撃から防ぐための防盾が装備された、正真正銘の「艦」でした。

その後はその時代の兵器や戦術の発展、戦場の特性などにより、様々なタイプの「艦」が考案され、活躍してきました。

東アジアにおいてのユニークな例としては、李氏朝鮮の「亀甲船」があります。

その名の通り船全体を亀の甲羅のような防盾で覆ったものです。

その存在自体や構造には異論があるものの、鉄の防盾で覆われていたことから、世界最初の鉄製装甲を装備した軍艦であると見る向きもあります。

15世紀ごろまでは、海上戦闘は敵船に横付けして兵士を乗り込ませたり、敵船に突撃して水線下の衝角をもって船体を破壊するといった戦術に特化した軍艦が使用されてきました。

しかし欧州で鉄砲や大砲が戦場の主役に躍り出ると、海上戦闘戦術も大きく変化し、軍艦もそれまでとは違ったタイプのものが登場します。

大航海時代のガレオン船が代表的なもので、大型で積載量も多いために多数の大砲を搭載することができ、速力も早いために瞬く間に海戦の主役になっていきました。

さらにこのガレオン船を強化した戦列艦も登場しました。

有名なトラファルガー沖海戦で活躍したのはこの戦列艦です。

この時代以降になると、船体の形式や大きさ、任務の種類により様々な呼び名の軍艦が登場するようになります。

コルベットやフリゲートなどは現在の海軍でも用いられている種別です。

現在の戦闘艦艇には主に任務内容によって多くの種別に分けられています。

各言語や文化圏ごとに種別としては同じものを指しても、呼び名や任務の内容により異なってくるので、ここでは第二次世界大戦以降の艦艇について良く聞かれる、基本的な5種別について解説を行います。

ちなみに日本国憲法第9条2項により陸海空軍その他の戦力の不保持が規定されている日本においては、建前上「軍艦」は存在せず、海上自衛隊の船舶は「護衛艦」と称します。

最も有名で良く聞かれるものとして「戦艦(英 Battliship)があります。

昨今ではマスコミにおいてすら、戦艦を軍艦一般と混同して使用する例がみられますが、戦艦はあくまでも軍艦の中の一種別としての呼称です。

砲撃によって敵艦船を撃破し、制海権を奪取する目的に特化した艦艇をさします。

敵艦を上回る長射程、大口径の大砲を持ち、想定されているあらゆる砲弾に耐える装甲を目指して恐竜的進化を遂げてきました。

しかし重量増のために速力が犠牲になることや、海上での航空戦術の発展に伴い本来の目的を外れ、陸上への艦砲射撃といった上陸支援任務につくことが多くなっていきました。

その役割は第二次世界大戦を以て事実上終えたとも言えます。

湾岸戦争でも第二次世界大戦時に建造された戦艦が使われましたが、その任務はあくまで巡航ミサイル等の兵器プラットフォームとしてであって、自慢の大口径砲や重装甲が威力を発揮することはありませんでした。

戦艦に次ぐ戦闘力を持つものとして「巡洋艦(英 Cruiser)があります。

その名の通り遠洋航海に耐える長大な航続力を持ち、敵艦との撃ち合いに堪える装甲を持つのが特徴です。

戦艦はこの巡洋艦における攻撃力と装甲防御力のみを、極限にまで高めたものということができます。

任務としてはその航続力と速力を活かした索敵や、長期間海上を遊弋し、敵国の海上補給路を断つ通商破壊などが挙げられますが、のちには戦艦などと共に艦隊を組んでの艦隊決戦や、後述の駆逐艦とタッグを組んだ対潜戦闘にも威力を発揮するようになります。

前者に適するものとして「重巡洋艦」、後者に適するものとして「軽巡洋艦」という呼称が使われた時代もありました。

ちなみに巡洋艦とは大変広い概念の言葉で、外洋での継続的な作戦行動ができる水上艦艇はほぼこのカテゴリーに入るといえます。

そのためその艦に期待された固有の任務により、水雷巡洋艦や防空巡洋艦、ミサイル巡洋艦などといった呼び分け方がされる場合があります。

海上自衛隊の護衛艦は、船の航行性能上から見れば巡洋艦と分類することもできるでしょう。

また最近各国海軍で運用されている「イージス艦」は、「イージス巡洋艦」と呼ばれることもあります。

イージスは「」という意味を持ち、その名の通り艦隊に随伴して潜水艦や航空機、ミサイルから艦隊を守るために卓越した探知装置を備えた「」としての任務に特化した巡洋艦です。

戦艦が活躍する大艦巨砲主義の時代の終焉を告げたのが、「航空母艦(英 Aircraft Carrier)」です。

略して「空母」と呼ばれることがあります。

英語での呼称を直訳すると「航空機運搬艦」という味気ない名称になりますが、もちろん運搬だけが目的ではありません。

航空母艦は戦闘機や爆撃機を多数搭載して艦上から飛び立たせ、再び艦上に戻ってこられるようにするために、船の全長にわたる飛行甲板を備えた、平べったい独特の艦形が特徴です。

最大の戦艦の射程をはるかに上回る航続力をもつ航空機を搭載することで、優れた索敵能力と攻撃力を手に入れた航空母艦は、その後の軍艦の王様として活躍してゆくことになります。

またこの空母に良く似た艦形をもつものとして、「強襲揚陸艦(英 Amphibious assault ship)」があります。

船内のドックに上陸用舟艇を搭載し、部隊を速やかに戦場へ上陸させることを目的とするものです。

空母と同じく飛行甲板をもちますが、運用する航空機はヘリコプターや垂直離着陸機が主体になります。

最近になって日本が空母を建造したと騒がれている、海上自衛隊の「ひゅうが」や「いずも」は、タイプとしてはこの強襲揚陸艦にあたります。

そして「駆逐艦(英Destroyer)です。

海戦における革新的な新兵器、魚雷の発明により登場することになったこの艦種は、いったなにを「駆逐」するのでしょうか。

敵艦船の水線下で大量の爆薬を破裂させて損害を与える兵器を「水雷」と呼びますが、この兵器を運用するためには敵艦船のぎりぎりまで近づかなくてはいけません。

魚雷とはこの水雷を自走させることによって、比較的離れた場所から敵艦船を攻撃する能力を持たせたものです。

当初魚雷を運用するための主な手段は、「水雷艇(英 Torpedo Boat)と呼ばれるものでした。

自走能力を持つ魚雷といえども、その射程は大砲に比べて短かったので、敵艦の射程内の懐深く潜り込んで魚雷を発射する必要がありました。

至近距離で撃ち出される敵艦隊からの防御砲弾を避けるためには、高速で小回りが利く小艇での運用が適していたのです。

当初駆逐艦の敵はまさにこの水雷艇でした。

艦隊に小うるさいハエのようにまとわりついて大損害を与える水雷艇を追い払い、撃破する目的で登場したのが駆逐艦なのです。

そのため駆逐艦には水雷艇を追いかけまわすための速力と、水雷艇を上回る攻撃力が備えられるようになりました。

ところがその後に外洋での大型戦艦などによる艦隊決戦が盛んに行われるようになると、駆逐艦は持ち味の高速性能を利して敵大型艦の射程内に進出し、魚雷を発射するという目的に使われるようになりました。

かつて自らが駆逐した水雷艇とまったく同じ任務に就くことになったのは皮肉なことです。

しかし同時に駆逐艦は新たな敵、潜水艦を駆逐するという任務も与えられるようになります。

第二次世界大戦後から現在に至るまでの間に、駆逐艦を巡る状況は大きく変化しました。

駆逐艦の持つ高速性能と、艦隊随伴することにより獲得した遠洋航海能力といった汎用性により、元は戦艦や巡洋艦の補助艦艇から多くの海軍では主力の座に就くことになったのです。

様々な用途を期待された結果どんどん大型化し、かつての巡洋艦を上回る排水量を持つものも登場しています。

海上自衛隊の護衛艦は、用途や目的から分類すると、駆逐艦と呼んだ方がふさわしいものです。

特に日本の対潜戦闘技術は世界的にみてもトップクラスと言われています。

最後に潜水艦です。

そもそもは水上航行を基本とし、必要に応じて潜水もできるという機能を付加されていったものです。

通商破壊で名を馳せたドイツのUボートの大成功以降、潜水艦戦術が発達し、潜水したままでの魚雷攻撃が行われるようになりました。

現在では一旦任務に入るとめったなことでは浮上しません。

潜水艦側から積極的な通信を行わない限り、敵国はおろか、自国からもその位置を探知することが困難という徹底した隠密性能を活かした任務に就いています。

動力の形式により「原子力潜水艦」と「通常動力型」に分けられます。

前者は原子炉を用いて発生させる膨大な電気エネルギーを利用するために高速です。

航続距離も桁違いに大きく、理論的には海中に数年潜ったままでの活動が可能です。

その一方、放射能漏れの危険はもとより、発生音が大きいために探知されやすいといった欠点もあります。

後者は、水中ではバッテリーに蓄えられた電力で航行します。

そのため充電ために時折浮上し、通常の船舶と同じくディーゼルエンジンなどの内燃機関を駆動させてバッテリーに充電を行う必要があります。

水中での行動時間が短いことと、速力が遅いことが欠点ですが、原潜に比べて音が静かで探知されにくいという利点があります。

また水中行動時間が短いという問題も、スターリングエンジンの実用化により改善されているものもありますが、その性能はまだ原潜には遠く及んでいません。

任務の形式による分類では、戦略核ミサイルを積んで潜航したままいざというときに備える「戦略原潜」と、魚雷やミサイルにより敵水上艦船や潜水艦を撃破する目的の「攻撃型潜水艦」に分けられます。

日本の海上自衛隊は、この潜水艦の性能、運用能力においても共に世界トップクラスと評価されています。

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