自動小銃のカスタマイズの幅を広げるのが、アサルトライフルのハンドガード部分に採用されているレール(RAS、レール・アダプター・システム)です。
グリップやタクティカルライトなど、外付けアタッチメントの装着に役立つこのレールシステムも進化を遂げ、いくつかの次世代モデルが登場して注目を集めています。
今回は、KeyMod(キーモッド)とM-LOK(エムロック)と呼ばれるシステムが、従来のレールシステムとどのような点で異なるのか、それぞれの強みについてご紹介します。
従来のレイルシステムの問題
KeyModとM-LOKが誕生した背景を考える上で、まずはこれまでのレールシステムであるピカニティーレール(20mmレール)が抱えていた課題について見ていきましょう。
重量増加の問題
いままでのレールシステムの一つ目の問題は、拡張パーツやアタッチメントを取り付けるレールがハンドガード全面にあるために、どうしても重くなってしまうことです。
RIS(Rail Interface System)やRAS(Rail Adapter System)と呼ばれる従来のレールシステムは、装着時の拡張性が大きな魅力ではあったものの、金属パーツが増えることで重くなり、機動性に問題がありました。
また、ただでさえ重いハンドガードに金属製のパーツや、アタッチメントが取り付けられることで、フロントヘビーとなり、銃を構えたときの負担が大きくなってしまったのです。
ケガのリスクとその予防に伴う課題
RAS(レール・アダプター・システム)はバレル回りを覆う構造上、基本的にレール部分を手で握って銃を構えることになるため、素手だとレールに指が食い込んだり、レールの角で指などを切ってしまう危険もありました。
また、レールを使用しない場合はレールカバーで覆うこともできるとはいえ、レールカバーを装着するとハンドガードが大きくなり、手で握りづらくなってしまう欠点も浮かび上がりました。
そのため、これらの課題を解決しようと新しいレールシステムが開発が望まれていたのです。
全面がピカニティーレールのハンドガードは重い上に持ちにくかったんだね。
VLTOR社のKeyMod(キーモッド)
鍵状の穴が特徴的なレールシステム
KeyMod(キーモッド)はアメリカのアリゾナ州にあるVLTOR(ヴォルター社)が開発した次世代レールシステムで、鍵穴(Key)のような穴が側面にいくつも空けられているのが特徴です。
この鍵穴は、ハンドガードの拡張性を維持した上で、軽量化に成功します。
これまではピカティニーレールでハンドガード全体を覆い、好きなところにアタッチメントを装着する構造でした。
しかしKeyModの場合、ベースとなるピカティニー規格のレールアタッチメントを自分で好みの場所にかんたんに取り付けることができるため、ハンドガード全体をレールで覆う必要が無くなり、大幅に軽量化することができたのです。
また、全面のピカティニーレールを廃止して軽量化を図っただけでなく、従来のレールシステムと同様の拡張性も、しっかりと担保することができました。
KeyModがあれば重量やケガ、そしてハンドガードの太さに悩まされる心配は、もうないでしょう。
マグプル社のM-LOK(エムロック)
よりミニマルなデザインが特徴的なレールシステム
M-LOK(エムロック)は2014年にマグプルより発表され、2012年に登場したKeyMod(キーモッド)に遅れを取ったものの、その後の優れた実績によって軍関係者の注目を集めているレールシステムです。
M-LOKはModular Lock(モジュラーロック)の略称で、KeyModと同様に好みの箇所にピカティニー規格のレールアタッチメントを装着することができるシステムです。
KeyModは鍵穴のような形が特徴でしたが、M-LOKはシンプルな長方形の穴が採用されています。
ナット一本でレールの装着ができるという簡便さがなによりの魅力ですが、それ以上に注目を集めたのはその剛性です。
アメリカ海軍の海洋システム司令部で行われた、モジュラーレールシステムの比較試験において、M-LOKは非常に高いスコアを獲得し、実戦でも耐えうる実用性を証明しました。
試験の結果を受けてアメリカ海軍では、次世代のスナイパーライフルにM-LOKシステムを採用することも検討しています。
誕生から5年余りしか経過していないM-LOKですが、将来、米軍をはじめ、多くの軍や法執行官において採択されていくこともますます期待されています。