M8045クーガーは、ベレッタの中でも比較的マイナーなモデルで、実銃においてもセールス面で、あまり成果を上げることができなかったようだ。
ウエスタンアームズ(以下WA)がM8045をガスブローバックガンとして初めてモデルアップしたのは2000年、のち2007年にカーボンブラック・ヘビーウェイトモデルとして再販した。
このモデルの大きな特徴としては、ベレッタ社から実銃用図面の提供を受けて制作されていることで、実銃さながらのフォルムが正確に再現されているうえに、グリップパネルもベレッタ社の実銃用のものが装着され、ベレッタファンのみならず、多くのトイガン初心者からマニアまでもが大満足するサービスといえるだろう。
さらに特筆すべきは、カーボンブラック・ヘビーウェイトモデルという点で、箱を開けてまず驚かされたのは、その色合いだった。
プラスチックでないのは一目瞭然、一般的なヘビーウェイト樹脂ともちがい、ブラックではなくややグレーがかった、艶をおさえた深みのある色合いだ。
風雨に侵され経年変化が見られる金属のような印象を受ける。
丁寧にポリッシュされたスライドのところどころに黒ずんだような跡が見られ、本物の金属らしさが表現されている。
鼻を寄せたら本当に金属臭がただよってきそうな感じ、手に触れてみると、さらに驚かされた。
わずかではあるが金属的な、ひんやり感が伝わって来たのだ。
このカーボンブラックという素材は従来のヘビーウェイト樹脂に加え、カーボンの粉末を混ぜて成型しているため、金属のような質感や、ひんやり感が表現されているのも納得できる。
それに加えてもうひとつ、ガンフリークを満足させてくれる特徴が、重量だ。
WAのM8045の重量は約960グラム。実銃に45ACP弾を8発ほど装填したときの重量とほぼ同じで、実銃を手にしたような気分になれる。
また、ローテティングバレルロッキングという、スライドのブローバックに合わせて、アウターバレルが右回転する機構を持っており、このM8045ならではのおもしろいところだ。
イジェクションポートを覗きながら実際にトリガーを引いてみると、アウターバレルが回転するのがわかる。
ついでフレーム周辺を見てみると、少々長ったらしい刻印が打たれてある。
ベレッタ社のパテントだと思われるが、こういった刻印の多さが目につくのが嫌という人もいるだろう。好みがわかれるところだ(私はこういった長い刻印は好きだが)。
スライドとちがってフレーム自体はカーボンブラックではないため、金属的な質感はないが、スライド部分と見比べたときに全体のバランスを崩すようなことは決してない。
色合いのちがいが落ち着いたグラデーションを表現しているといっていいかもしれない。
また、パーティングラインがきれいに処理されていて、フレーム全体がすべすべした肌ざわり、もともと単一の枠型でできていたかのように思える。
WAの作業はすごく丁寧だといえる。
スライドをオープンしてみた。???・・・ちょっと馴染みのない感触があった。
しこりがある?といったらいいだろうか。
普通ならスライドを後退しきったとき、スカッとする手ごたえがあるのだが、このWAのクーガーにはそれがない。
ぎりぎりのところで何かに引っぱられて後退しきれなかったような感じがする。
じつは、強力なブローバックに耐えきれず破損してしまわないように、衝撃を吸収するパーツが組み込まれているらしいのだ。
ちょっと残念な気がしないでもないが、それだけこのWAクーガーのブローバックが強力だということなのだ(この解説は少しあとで)。
次にハンマーの動作を確認。
セイフティレバーにはデコッキング機能が付いていて、ハンマーが起きている状態でレバーを下げるとハンマーが落ちる。ハーフコックの位置からでもハンマーを落とすことができる。
ちなみに、セイフティレバーはアンビタイプになっていて、左右どちら側からでも操作できるようになっており、ハンマーを落として中を覗いてみると、ファイアリングピンが見える。
これも実銃そっくりの作りになっていて、セイフティレバーを下げるとファイアリングピンが上を向く構造になっている。
続いてマガジン。こちらはRタイプの亜鉛ダイキャスト製で、6ミリBB弾を27発装填できる。
この弾数ならサバイバルゲームでも不足はない、サイドアームとしてじゅうぶん使えると思う。
実際に使ってみた感想はというと、あまり冷えには強くないと思った。しかしこれはマガジンの個体差もあるから、一概にはいえないところだ。
気温20度にちょっと届かない屋外でまずまずの動作が確認できたので、25度を超える夏場であれば快調に動いてくれることはまちがいない。
いちど、冬場のかなり寒い日に暖房の入っていない寒い部屋で動作確認をしてみたことがあったが、そのときはさすがに動かなかった。
それどころかマガジンに霜が降りて真っ白になり、アイスキャンデーみたいになってしまった(笑)。
お湯で温めたタオルで表面を拭ってなんとか元の状態に戻せた。やはりガスブロは冬場には向かない。
さて、このWAクーガーのブローバックリコイルがどれほど強力かということだが、前述したようにスライド内部に衝撃吸収用のパーツが組み込まれているほどだから、それがいかに強いものか想像していただけると思う。
だが、まず驚いたのはリコイルではなく音の大きさだった。
スライドが後退したときに「バキッ!」という固い大きな音がするのだ。
深夜のワンルームマンションだと近隣から苦情が来るかもしれないと思ったほど(笑)、それほど他のガスブロでは経験したことのなかった大きな音がする、もちろん音ばかりではない。リコイルも相当なものだ。
WAのマグナブローバックシリーズの中でもまちがいなくトップクラスだろう、同じベレッタのM92をはるかにしのぐパワーを感じた。
他社のガスブローバックガンと比べても抜きん出ている。
まずはBB弾を装填せずに空撃ちしてみたのだが、本当に驚いた、と同時に嬉しくなった。
これほどの強力なリコイルを体験したのは初めてで、音の大きさと相まって、さすがにスライドが割れてしまうのではないかと内心ビビってしまったほどだ。
撃っていて気持ちがいい。手に伝わってくる衝撃が心地よく、いつのまにか自分が実銃を撃っているような気分になってしまっていた。
0.25gのBB弾を使って撃ってみた。このクーガーは固定ホップ式になっていてホップの調節はできないが、弾道はかなり安定しているほうだと思った。
10mの距離で壁に貼り付けたペーパーターゲットに向かって撃ってみたが、綺麗に一直線に飛んで行くのが確認できた。
サバイバルゲーム等でもじゅうぶん役立ってくれそうな集弾性だと思う。
ちなみに、段ボール箱を撃ってみたところ、表面を綺麗に貫通し、反対側の内面に食い込んで止まった。
アルミ製の空き缶の場合だと、一発で穴を開けることはできなかったが、同じ箇所を何発か撃っているうちに貫通した。
※いずれも夏場の室内射撃。気温25度。
以上がWAのM8045クーガー・カーボンブラックヘビーウェイトのレビューとなるが、総評として、かなり手ごたえのあるガスブロであるといえる。
これといって不満な点は見当たらない。
家でひとりで楽しむもよし、屋外でサバゲーするのもよし、どんな使い方でも満足できる一丁ではないだろうか。
買って損することはまずないといえる。
最後に、今回のレビューとはべつに少し補足的な話にも触れておきたいと思う。
イタリアの老舗銃器メーカーであるベレッタ社が開発した、M8045クーガーだが、実銃の世界ではすでに生産は終了してしまっている。
現在はベレッタ社からライセンスを取得したストーガー社が、そのままのデザインを残したまま、ストーガー・クーガーとして生産、販売をしているようだ。
もちろんベレッタのロゴや刻印はなくなり、完全にストーガー社の製品になっている。
WAがこのM8045をモデルアップする際にベレッタ社から図面の提供を受けることができたのは、ひょっとするとこういった経緯があったからかもしれないと、今になって思う。
こういったライセンスの取り扱い等については、私も知識がないのでなんとも言えないところだが、ベレッタ社からストーガー社にライセンスが完全に移行するまでに猶予期間?みたいなものがあって、その期間であれば図面の提供を受けるのがそれほど難しくなかったということなのかな?と私なりに推測してみたのだが・・・。
ベレッタ社の手を離れてしまったM8045クーガーだが、その遺伝子は次世代の銃に確実に受け継がれている。
同社の最新ポリマーフレーム拳銃であるPx-4がまさにそれだ。
M92やM84にはない独特のデザイン、そしてローテティングバレルロッキング機構などもしっかりと受け継がれている。
ちなみに、Px-4は東京マルイからガスブロとしてモデルアップされている。
WAのクーガー。
このまえ久しぶりに箱から出して手に取ってみたのだが、やはりいい銃だと思う。
これまでいろいろなエアガン、ガスガンを見てきたが、自分にとっていちばんしっくりくるモデルだといえる。
そういえば、クーガーとは大型肉食獣ピューマの別名だそうで、手元にあるクーガーを見てピューマの姿を思い浮かべてはみたのだが・・・うーん。