スコットランドの住人、ハイランダー
ロイヤル・スコットランド連隊といえば、イギリス陸軍の中でもかなり有名な大型連隊の一つです。
この連隊に所属する正規歩兵大隊の中でも、第3大隊に所属するブラックウォッチ(Black Watch)が特に知られています。
このブラックウォッチはその名の通り黒い見張り番という意味で、全体的に暗い色彩の服装をしており、古くは1700年代の反政府派を取り締ったハイランダーからなる独立歩兵中隊6隊をルーツとした歴史の長い部隊です。
彼らハイランダーは世界中に派兵され、多くの戦績をあげると共に、その特異な衣装も相まって、その名を世界に轟かせました。
スコットランド連隊の中においても比較的少数の部隊だったブラックウォッチでしたが、その活躍は一目置かれる存在だったようです。
ハイランダーはスコットランド北部の住人であり、日本語だと高地連隊などと訳されていますが、そんな彼らがなぜ、精鋭部隊といわれるほど強かったのでしょうか。
もともとスコットランドの住人達は、ヴァイキングやローマ帝国、イングランド王国など、様々な国家から軍事的に侵略されることが歴史的に多く、内部でも北部と南部が勢力争いを続けていたために、戦いに明け暮れていたことがその要因だと考えられています。
さらに彼らハイランダーの住まう地域は山岳地帯であるがゆえ、平地に住む人々と比べ、実る作物が少なく生活が貧しかったために、男たちは傭兵としてヨーロッパ諸国へ赴くことが多かったと言われています。
こうした背景があったためにイングランドにとってもスコットランドが貴重な兵士の供給源となり、ブラックウォッチやスコッツ・グレイなどの精鋭部隊が誕生することになりました。
ちなみにスコッツグレイはカトルブラの戦いにおいて、竜騎兵グレイ連隊と呼ばれた第92(ハイランド)歩兵連隊で、ブラックウォッチと負けずと劣らず戦果をあげた部隊として知られています。
スコッツ・グレイは、屈強な精鋭揃いでイギリス重騎兵が大きな戦果をあげた戦いには必ずといっていいほど登場します。
スコッツ・グレイは、現在ではロイヤル・スコッツ近衛竜騎兵に統合され、今でも帽章はナポレオン軍の軍旗についていた鷲と「Waterloo」の文字が記章となっています。
ハイランダーを生み出したスコットランドは、決して環境に恵まれたとは言えない場所ですが、その過酷な環境があったことで精鋭の戦士を生み出す要因となったのです。(日本の現在におけるゲームや漫画などのフィクションにおいて、高位の騎士のように扱われるのも納得ですよね。)
自動車メーカーのトヨタもハイランダーの名を冠したSUVを登場させていますし、私たち日本人にも馴染みの深い名前となっています。
ハイランド地方で発展した織物
タータンチェックはハイランド地方で発展し、シンプルな織り方ながら染色した糸を格子状に網みあげることで、さまざまな複雑な織物を作っています。
このような歴史を知ったうえで、ファッション用語としてのタータンチェックやブラックウォッチを耳にすると、なんとも不思議な気分になります。
レジメンタルタータン(連隊用)をただ単にお洒落なデザインとして受け入れるのは、ミリタリー好きの私としては難しく、「あのハイランダー達が愛した模様だ」とか「屈強な兵士達がきていた衣服の柄だ」とか思ってしまいます。
スコットランドの人々からしてみれば、当時は女子供にいたるまで誰でも着ていた柄なんでしょうが、日本の女性達がスコットランドの人々が愛用していた織物を「チェック柄」ではなく「ブラックウォッチ柄」と言って、ミリタリー起源のファッションだとは知らずに身に着けているのは、ミリタリーマニアとしては、なんだかうれしい気持ちになります。
ミリタリーマニアの私は同じような感覚では、レギンスも「スネあてのことだよね」とか思っちゃいますし、見渡せばファッションにはミリタリー起源の用語が多く存在しています。
カーディガンは元を正せば、カーディガン伯爵(ジェイムズ・ブルデネル)が、怪我をした兵士でも着やすいようにと、Vネックのセーターを前開きにしたことが由来です。
トレンチコートも、「トレンチ」というのは塹壕(戦争中に銃撃から身を守るための掘った溝)の意味で、トレンチコートは第一次世界大戦中の寒冷地での戦いで着用するためのイギリス軍の軍用コートとして開発されたことが由来となっています。
タータンチェックは日本の大手デパート伊勢丹の象徴にもなっており、伊勢丹タータンと呼ばれています。
伊勢丹タータンは元をただせば、バーバリーやロイヤルスチュアートも家紋のような意味で使用しているアンシェント・マクミランと呼ばれる柄です。
タータンチェックは、敵味方を判別するための模様で、絵画「カロデンの戦いでのハイランダーの突撃」では、様々なタータンチェックを纏ったハイランダーを見ることできます。
不思議な文章ですなぁ。