10年以上の軍事技術差
真珠湾攻撃の作戦立案に当たった旧海軍上級参謀であった源田実氏が、自民党代議士になった当時、米国から航空自衛隊に導入されたF102スターファイターを真近に見られて、石原慎太郎氏に、この様なことを言われたそうだ。
「旧軍の大東亞戦争中、もし、この航空機が何機あったら、戦機を挽回できたと思う。たった1機。それだけで充分挽回できたよ。10年程度の軍事技術の進歩、或いは遅れとは、そんなもんだよ。」
私は、これには、一因の真理があると思う。
中東戦争で、イスラエル空軍とシリア空軍間の空戦において、戦闘機の性能、パイロット技量がほぼ拮抗していたにも関わらず、イスラエル軍の早期警戒機E2Cホークアイの支援により、シリア空軍は10機程度のほぼ全滅であったのに対し、イスラエル軍機側は、損害皆無であった事例がある。
運用に成功すれば、F35の約40機が、すべて一方的にJ10やJ11を撃ち落し、F35、1機が4発の対空ミサイルを持つので、1回の空戦で、150対0の交換比を出せるかもしれない。
また、200機のF15も全て投入すれば、空自のみでかなりの損害を与えることができる実力を持ち得るかもしれないし、北の弾道弾施設、核製造施設、通信、ロッケット燃料施設、或いは政治的な中枢を爆撃できる手段を得ることができるかもしれない。
ミッドウェー海戦前夜の戦駒図上演習の諌め
ミッドウェー海戦を控えた旧海軍で、図上演習が繰り返し行われていた。その過程で、賽の目で、日本海軍の空母が撃沈される結果が出た時、時の演習主幹は、「その状況中止」として、悪い結果予想を抹消して、作戦計画に資する演習を続行していたそうである。
防衛大学校の学生だったころ、航空自衛隊生徒出身の同期のHがこんなことを言っていた。
「(航空自衛隊)生徒の頃から、一番先輩に叩き込まれたことは、先の予想は、最悪な場合を想定して、最悪の場合に次善の策を取れる様に、常日頃から考えて行動することだよ。これって、兵隊さんの基本だね。」
米陸軍のM60A2戦車スターシップ
米陸軍は、ベトナム戦争の激化に対応して、「将来型」の新兵器として、M60A1戦車に変えて、M60A2戦車を、これと同系列の空挺戦車M551シェリダンとともに実戦投入した。
これは、当時の戦車技術としては、画期的な、同じ砲塔から対戦車ミサイルの発射と、対歩兵用榴弾の射撃の両方が可能なもので、実戦面での飛躍的な戦果が期待されていた。
特に、この車両は「高価」なため、その導入を軍、議会、政権に後押しするため、かなり吹っかけた評価をメディアを初め各方面にメーカー側が流したり、ロビー活動をしたり、かなり過剰な営業活動、をやったらしい。
そして、いざ兵隊の血の流れる戦場で、「非常に困難な運用を要する」「整備が困難で稼働率が落ちる」といった具体的な指摘とともに、悪評が充満してしまった。
この事態に対して、米陸軍の取ったことは常識的だった。
つまり、このM60A2の導入、実戦配備で、第一線から退役しつつあった、M60A1を全て戦線に復帰させ、M60A2の工場生産ラインは全て、M60A1に戻し、M60A2を退役させるとともに、M60A2では無く、M60A1の運用、設計構想に基づくM60A3戦車の開発を急がせた。
ステルス技術は総合力
旧海軍の図上演習ではないが、実際、運用、さらに実戦で利用するまで、費用に見あうどの程度のステルス能力が第5世代戦闘機と呼ばれる、F35が持っているか明確では無い。
賭けをするなら、最悪の目が出た時の被害を予想すべきことは前に述べた、ステルス技術があると言っても、それは機体形状上のものであろう。
ステルス技術には、他に、機体素材上の配慮を要する面もあるが、この点は、余り強調されていないようだ。
また、レーダー誘導ミサイルの避弾対策のためには、チャフという繊維物質を戦闘機から排出する手段があり、よくイスラエルの戦闘機が盛んに、このチャフと、赤外線誘導ミサイルを避けるフレアを放出している映像を見たことがある。
また、米空軍のワイルドウィーゼルと呼ばれる電子戦機は、戦域全体を覆う妨害電波を出して、その空域の味方機のレーダー誘導ミサイルの被弾を避けたり、機体位置を隠したりする。
この機体は空自にはなかったと思う。
ただ、同様の機能は、海自のイージス艦にあるかもしれない。
F35の電子戦能力の装備は、戦闘機としては最新鋭だろう。
しかし、そうだとしても、例えばプランBの一環として、F35の最新の電子戦能力装備のみを、FA-18に搭載するようなパターンも有りだと思う。
「損耗」-交換比は、運、天候、運用、で変動が大きい
私は陸上自衛隊の高射教導隊での、勤務でこんなやり取りをしたことを覚えている。
「アルファ1ロック・・・・キル3」一発の地対空ミサイルの射撃でも、仮に、敵編隊が密集していた場合、ミサイルの直撃でなく、近接信管により自爆したミサイルの破片が敵機体の脆弱部に損傷を与え、一機に3機を撃墜する場合があり得る。
この想定は、対抗部隊甲(ソ連)のシード(対射撃部隊制圧)等が、数的な圧倒を目的とする飽和攻撃によるものと推定してのものである。
もし、東シナ海上空で、J10、J11の飽和攻撃に対抗するのであれば、通常、我も小出しに戦力の逐次投入をするのでなく、数的な劣性を少しでも補う様に、集中する航空運用を取ると思う。
当然、海上には艦対空ミサイルを連射する中国海軍がおり、自分の経験の感覚からすると、いくらステルス能力があったとしても、かなりの数のレーダー誘導ミサイルが撃ち込まれれば、破片を食らって、どんどん損耗しそうな感じである。
また、中国軍の最新鋭機J10、J11だけでも、近い将来600機ぐらいは揃いそうで、空自のF15、200機とF35、42機では、運用、運、天候等が思わしくなければ、非常に悲惨なことになりかねない。
また、F35の武装に関してだが、防御用と思われる、バルカン砲も付いている。
つまり、いくらステルス能力が格段に高いとはいえ、敵航空機との消耗戦の過程で、常識的に、目視会敵による格闘戦の状況は十分想定すべきという、運用上の大前提がある。
バルカン砲と赤外線ミサイルの打ち合いで、F35がJ10、J11より特別優れているとは思えない。
この状況下における交換比は、数的に我が劣勢なので1:1以下と想定するのが常識だろう。
産経新聞報道から
12月11日発表の米軍関係者の報告によると、F35の試作機に多くの破損が見られることから、米軍の運用開始時期を2017年から2年延期するとのことである。
当の米軍さえまだ使っていない機体を、空自が先行調達できるのか。
また、そんな不完全なもので、M60A2の時の様な状況を内在していたらどうするのか。
責任を逃れるため、現実を逃避して、使えないF35の早期配備をした後、稼働率、整備性、運用上の問題を、防衛秘密として隠し通せるか。
2016年頃は、政府の財務問題もかなり深刻になり、社会不安も拡大し、失業率の高騰や、政府批判もかなり盛んになっているだろう。
十分の賞与を得られなかった、官僚が国を売って、防衛機密がITを駆使して流出する事態は容易に予想できる。
そんなことで、軍事バランスが崩れて、無益な大量出血が起こらない様に、ぜひとも、プランBの検討、研究、転向時期について、事前によくよく考えてもらいたい。
プランBに関して
確かに、喫緊の事態になってから、M60A1回帰時の米軍の様に、至急FA-18の調達に切り替えれば良いというかもしれない。
だが、空自の軍事戦略、高装備化による劣性の挽回というシナリオの破綻はどう対応すべきか。
プランBでは、質への依存から量の改善を目指すべきだと思う。
ここで、予算で補得無いものがある。精鋭の歩兵を養成するのには数ケ月係るのだ、だが優秀な戦闘機パイロットを育成するためには、数年の歳月がかかる。
いざ、F35、42機の戦力をFA-18、100機で補おうとしても、パイロットが育成出来ていなければ、戦力は構築できない。
空軍戦力の増強が中国を刺激するというのであれば、例えば、パイロット育成課程の選抜率を厳しくして、最初の段階の頭数は直ぐにでも、倍増しておくべきだ。
また、戦闘機はもちろん、輸送機、連絡機等の交代定員を増やす手もあろう。
いくら太平洋戦争時に日本にF102があっても、たった1機では圧倒的物量米軍を打ち負かすことはできないでしょう。F102が数機落としたところで、残りの数百機の爆撃機が日本の艦隊や都市を爆撃するだけです。F35も仮に当初想定した性能を発揮しても、数が少なければ圧倒的な物量のT34やM4戦車の相手に敗れたティーガー戦車のように物量で敗れるだけです。