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近世以降の騎兵について

戦場の花形、騎兵

騎兵というのは人類が馬にまたがるようになって以降、長きにわたり戦場の花形として降臨しました。

500キロ前後の重さを持つ体と、60キロ前後の速さというのはそれ自体が恐ろしい兵器であり、代わりとなる物など他に存在しなかったのです。

また、馬に跨るという事は兵装を自分で運ぶ必要が無いという事でもあり重装備が可能な上、一般的に上から攻撃するというのは武器を振り下ろす際の威力が増すため、徒歩と戦うのにくらべて圧倒的に有利に勝負を運べます。その為、騎兵というのは戦場の主役を担っていました。

しかし、近世になりマスケット銃などが登場したことにより、騎兵の立場は変わって行くのです。

重騎兵から軽騎兵へ

銃器の登場により、長距離からの狙撃というのが可能になった為、馬にまたがる騎兵が前面に出るのは危険になりました。

また戦術もテルシオ(スペイン方陣)と呼ばれる銃とパイクという、長い槍を使った防衛中心の戦いが流行った事で、安易な突撃では敵陣を崩す事が不可能になり、お互いに陣形を組んで持久戦を行い、敵陣が崩れたら突撃をかけるという戦術に変わっていきます。

その結果重騎兵と呼ばれた中世のような重装備をして槍で突撃をかける騎兵というのは戦場から姿を消すことになったのです。

その代わりに、火器を装備した竜騎兵、鎧(後に簡略化)を身に着けてはいるものの同じく火器を装備した胸甲騎兵(きょうこうきへい)、重装備を排し、槍や刀、ピストルなどの装備を使って機動力で奇襲や敵情視察、補給部隊など装備が薄い部分への襲撃を行う軽騎兵が登場しました。

因みに現代において、銃身が短い銃のことを「カービン」と称する事が有りますが、カービン銃とはこの時代に生まれた騎兵用の銃がもとになっているのです。

というのも、当時の銃というのは精度も威力も現代より劣っており、それを補うために長い銃身を持っていたのですが、馬上での取り扱いは非常に難しく、それを解消するために短い銃身を持つ銃が作られるようになったと言うことに由来します。

銃の進化により騎兵が大きな的になったとはいえ、車など無い時代において馬の機動力というのは変えが無い物であり、騎兵は砲兵や銃兵の攻撃により相手の敵陣が崩れると、ピストルとサーベルを装備して突撃をするという役割を担っていました。

これは火器の威力が鎧では対応できなくなる近代になるまで有効な戦術であり、形を変えてはいるものの騎兵は戦場の花形の位置を担い続けていたのです。

騎兵の衰退

そんな騎兵隊も、火器の発達に鎧の発達が追い付かなくなり小銃の銃弾が防げなくなっていきました。

そのため戦場で正面から白兵戦(はくへいせん、剣などを用いた近距離での戦闘)を行うという事が少なくなっていき、徐々に衰退し姿を消すことになります。

ですが重騎兵の消滅したことにより、騎兵が担ってきた打撃力が戦場から減った為、その代案が求められました。

Knight2

By: Brad

戦術としては、ピストルを使った連続奇襲であるカラコールなども生まれましたが、これは突撃力の代案にはならなかった上に、射程が短いピストルではまず敵にあたらず逆にマスケットで反撃されるという弱点があったのです。

そうこうするうちに最終的にはやはり槍や刀剣を持っての突撃しかない、という事で馬上で剣を抜いて敵軍に突撃をかける抜刀突撃が考え出されました。

その後、砲兵や銃兵の攻撃で敵陣に隙間を作り、そこに騎兵突撃をかけて敵陣を崩すという抜刀突撃を発展させた三兵戦術が各国で用いられるようになったのです。

またこの時代において、騎兵の戦術の変化の要因の一つとして銃剣の登場があげられます。

銃剣の登場によりパイクと呼ばれる長槍が姿を消し、歩兵の陣形が火力重視の形に変わりました。その結果歩兵の防御力の低下が起きて、騎兵突撃の威力が増す結果になったのです。

ところが、銃砲の進化によって現代と同じ後装式の銃が生まれたり、戦場が国民軍の登場によって士気が高い物になったため、逃亡対策の陣形を組む必要が薄れた事などにより、散兵と呼ばれる小規模での行動が基本となり、歩兵で陣形を組むという事が殆どなくなっていきます。

これは騎兵の突撃の意味を減らす事になり騎兵の衰退をもたらすのですが、一方で散兵化した歩兵を各個撃破する軽騎兵が重要視されるようになりました。

このように形を変えつつも戦場で活躍していた騎兵ですが、機関銃の登場により、前線から姿を消すことになります。

第二次世界大戦になると、サーベルを抜いての騎兵突撃というのは稀有な物になりましたが、まだまだ各国とも自動化が進んでおらず後方での活動では騎兵は重要な兵でした。

騎兵は偵察に出ている歩兵に対しての奇襲や、連絡など後方支援活動の他に、斥候(せっこう、敵の状況などを探ること)や装備が手薄な後方の補給部隊兵の攻撃など、様々な分野で活躍します。

また、自動車や戦車の性能がまだ低かった上に整地されていない土地が多く地域や戦場によっては馬の方が使いやすい事も多くありました。なので一部の地域や戦場においては騎兵突撃による成果が出ています。

しかし第二次世界大戦以降は機械化が進み自動車や戦車の性能も向上し、物資の輸送も鉄道や飛行機が増えたため、完全に騎兵はいなくなってしまいました。

現在に残る騎兵

現代、戦場においては騎兵が居なくなりましたが、一部の警察では騎兵が存在しています。

巨大な馬体というのは群衆への威圧効果が高く、暴徒対策として心理効果ある上に、普段は愛くるしい姿から苦情がでる事はありません。

またバイクや車が登場しているとはいえ、大規模な自然公園で自転車や車の乗り入れが禁止されている場所では、小回りが利き、人よりも高い機動力を発揮する馬というのは重要な戦力です。

こういった利点はあるとはいえ、基本的には儀礼や観光用の騎兵であり、先進国の戦争において馬は完全に姿を消したと言っても差し支えありません。

ただし、花形であった騎兵という名前は各国の軍隊で使われており、アメリカには騎兵連隊や騎兵師団という名前の軍がいますし、最前線で戦う落下傘部隊などは竜騎兵や騎兵の名誉を重んじて騎兵師団という名前をいまでも付ける事があります。

このように姿や存在意義を変えつつも騎兵と言うものは存在し続けているのです。

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