横須賀の海軍カレーなど、最近「ミリメシ」がひそかなブームになっています。
日本国民の安全を守る自衛隊の皆さんは、普段どんな「ミリメシ」を食べているのでしょうか?
今回は、自衛隊の「ミリメシ」事情に迫ります。
ミリメシとは?
ミリメシの「ミリ」は、「military(軍用の・軍隊の)」の略。
「メシ」は読んで字のごとく「飯」です。つまり、軍人さん達が食べているご飯のこと。
このミリメシが今、ひそかなブームとなっています。
世界の軍隊のミリメシを体験した食レポ本や、日本の自衛隊の食事事情について特集したムック本も出ています。
古くから海軍港として発達し、現在も米海軍と自衛隊の基地が置かれている横須賀では、ご当地グルメとして『横須賀海軍カレー』が注目されています。
大手通販サイトでも、非常食・ミリメシのカテゴリーで「レーション」と呼ばれる保存食タイプのミリメシが売られています。
一般人にとっても、ミリメシは身近な存在になりつつあります。
我々にもおなじみのミリメシ
カレーライスとラーメン。どちらも、子供から大人まで人気の高いメニューです。
この2つ、実は旧日本海軍と馴染みが深い料理なんです。
日本海軍とカレー
カレーライスの由来は、戦前の日本海軍にあると言われています。
横須賀に入港した英国海軍は、カレーパウダーの入ったビーフシチューを食べていたそうです。
それを見た日本海軍は、これを参考にして小麦粉でとろみを付けた、日本風のカレーを作りました。
英国海軍の主食はパンでしたが、日本海軍では「パンよりもご飯の方が力が出る」という理由で、日本の主食であるご飯にかけて食べるようになりました。
戦後、それぞれの故郷に戻った軍人さん達が、このカレーライスを広め、全国の家庭で普及していったそうです。
旧日本海軍では、長い航海中に曜日の感覚を失わないよう、土曜日にはカレーを食べていました。
その習慣は、現在でも続いています。週休二日制の導入で、土曜日から金曜日に変更されましたが、金曜日の昼食には、全国の海上自衛隊員がカレーライスを食べているそうです。
大日本帝国海軍とラーメン
ラーメンが日本の料理書に初めて記載されたのは、20世紀前半のこと。
それも、『海軍主計兵調理術教科書』という大日本帝国海軍の料理の教科書というから、驚きです。
この本に載っているラーメンは、正式には「蝦仁麺(シャハンメン)」といい、具は芝エビ・焼き豚・筍・しいたけなどでした。
また、揺れる艦内でこぼれないように、汁にはとろみも付けられていました。海軍ならではの工夫です。
この「蝦仁麺」は、2003年頃から海上自衛隊の厚木基地で再現され、名物メニューとなっています。
自衛隊が食べているご飯とは?
現在、日本には陸海空3つの自衛隊があります。
国家防衛のみならず、災害時に国民の命を守ってくれる自衛隊は、日々厳しい訓練や職務に励んでいます。
そんな自衛隊の皆さんは、いったい何を食べているのでしょう?
気になるそのご飯事情に、これから迫ってみたいと思います。
自衛隊の食事は、大きく2種類に分けられます。
1つは基地で食べる『日常食』。2つ目は、野外訓練や有事の際に食べる『戦闘食糧(レーション)』です。
日常食について
厳しい訓練や職務をこなす自衛隊員にとって、食事でのエネルギー補給は必要不可欠です。
基地での食事は『日常食』と呼ばれます。日常食のメニューは各隊・各基地(駐屯地)によって様々です。
どの基地でも、隊員の健康を考えたバランスの良いメニューを提供しています。隊員からのリクエストメニューを採用している基地もあります。
1食あたりのカロリーは、1000㎉前後。主食と主菜・副菜のバランスが取れたメニューは、学生時代に食べた給食のよう。
陸上自衛隊の中でも、特に「うまい!」と評判なのが、松戸駐屯地です。
10代から20代の若者向けのメニューが充実している、というのが人気の理由。
「鶏肉のパプリカ煮」や「ポークピカタ」、「オイスター焼き」「レモン醤油焼き」「エスニック焼き」など、肉料理だけでも様々なバリエーションがあります。
また松戸基地の食堂は、需品学校の学生が野外実習で作った料理が出されることでも知られています。
戦闘食糧(レーション)について
『戦闘食糧(レーション)』は、野外訓練や有事の際に食べられる携行式の保存食糧です。
一般的に「ミリメシ」として認識されているのは、こちらの方ではないでしょうか。
『戦闘食糧(レーション)』には、2つの種類があります。
缶詰タイプの『戦闘食糧Ⅰ型』と、レトルトパック式の『戦闘食糧Ⅱ型』です。
1.戦闘食糧Ⅰ型
『戦闘食糧Ⅰ型』は、非常用の給食用として作られた缶詰タイプの保存食です。昭和29年から自衛隊で導入されました。
平均的なカロリーは、1食につき1000㎉。保存期間が3年と長く、陸海空の3自衛隊で採用されています。
しかし、隊員が実際に『戦闘食糧Ⅰ型』を食べられるのは、保存期間の3年目になってから。1年目は補給処で、2年目は各駐屯地にて保管され、災害の際には保存食として配られます。
災害に備えた備蓄品として名高い乾パンと金平糖も、自衛隊では『戦闘食糧Ⅰ型』メニューの1つです。
『戦闘食糧Ⅰ型』の主食は、乾パン(金平糖入り)・白飯・赤飯(もち米100%)・五目飯・とり飯(導入当時は、牛肉や鯨肉を使用していました)・しいたけ飯など。
主菜は、ウインナーソーセージ(スモーク)・マグロ味付缶・鶏肉もつ野菜煮・鶏肉野菜煮・ます野菜煮・牛肉味付缶・味付ハンバーグなど、1缶で野菜やタンパク質が取れる物が多いです。
オレンジスプレッド(乾パンにつけるジャムのようなもの)・たくあん漬・福神漬といった副菜もあります。
缶から出して加熱するなど、調理には25分ほどかかります。調理後は、冷めても3日間は食べられます。
2.戦闘食糧Ⅱ型
『戦闘食糧Ⅱ型』は、簡単に補給できて持ち運べるという点を重視したレトルトパック型の保存食です。
1食につき、200gのご飯が2パックに、主菜と副菜が付くメニュー形式が多いです。
1食あたりのカロリーは、平均して1000㎉前後。保存期間は1年間で、日本では陸上自衛隊のみが『戦闘食糧Ⅱ型』を利用しています。
レトルトパック式なので携帯しやすく、移動が多い部隊には非常に便利なミリメシです。
『戦闘食糧Ⅰ型』と比べて保存期間は短いですが、10分で食べられるという調理時間の短さと、メニューのバリエーションの多さは魅力です。
『戦闘食糧Ⅱ型』の主食は、白飯・ドライカレー・赤飯・豆ご飯・山菜飯・五目飯・とり飯・蟹チャーハン・五目チャーハン・クラッカーなど。ご飯類は200gのパックが1食につき2つ出るので、白飯のパックが2つという日もあれば、異なる種類のご飯が1つずつという日もあります。
主菜は、ハンバーグ・フランクフルト・ハムステーキ・中華風肉団子・マグロステーキ(2切れ)・焼き鳥・チキンステーキ・筑前煮・鯖生姜煮・牛丼・中華丼・ビーフカレーなど、食べ応えがあるラインナップです。
『戦闘食糧Ⅱ型』は、副菜も充実しています。ツナサラダ・ポテトサラダといったサラダ類に、油揚げの味噌汁・卵スープ・きのこスープ・お吸い物といった汁物。福神漬・高菜漬・大根キムチ・はりはり漬といった漬物もあります。
通販や、自衛隊と縁の深い地域のご当地グルメとして、一般の人も食べられるようになったミリメシ。
あなたも一度、自衛隊員と同じご飯を食べてみてはいかがでしょうか?