この銃がガスブロにモデルアップされることが決まったとき、私はついつい気分が舞い上がってしまいました。
それほど待ち望んだ一丁でした。
今回のレビューは、東京マルイ『S&W M&P9』です。
東京マルイからモデルアップが決まり、最初に公の場にお目見えしたのは2009年10月の全日本模型ホビーショーの会場でのことでした。
そのときは45口径モデルとしてモックアップ(製品化される全段階での試作品)が展示されただけでしたが、それでもS&Wファンのみならず多くのガスブロファンの目を釘付けにしたことは言うまでもありません。
しかし実際に発売されるまでにはかなりの時間がかかりました。
当初の予定から1年が過ぎ、2年が過ぎ、それでも発売されないことに不満を募らせたファンは少なくなかったはず。
このまま話が立ち消えになるのでは?と、私などは疑いを持ってしまったほどです。
月日は流れ、M&Pのことを少し忘れかけていた2014年8月、発表からじつに5年の歳月を経て、ついに販売開始となったのです。
5年はほんとに長かったです。
発売が決まったときは一瞬気分が昂揚したあと、すーっと体の力が抜けました(笑)。
それほど待ち焦がれていたM&Pだったのです。
まさしく満を持しての販売開始だったと思います。
全日本模型ホビーショーでの発表時、東京マルイは45口径モデルとしての発売も視野に入れていたのかもしれませんが、
最終的には9ミリモデルに落ち着いたようです。
この選択はS&Wファンにとってはうれしいかぎりだったのではないでしょうか。
45口径の破壊力もたしかに魅力的ではありますが、やはりS&Wには9ミリの絶妙なバランス感覚のほうがしっくりくる
感じがします。
〝S&Wの9ミリ〟という響きに、この上ないここちよさを覚えるのは、はたして私だけでしょうか?
S&W社といえばアメリカ最大級の老舗銃器メーカーであり、かつてM36チーフスペシャルなどに代表される小型リボルバーによって一世を風靡し、その後も数々の名リボルバーを発表してきました。
もちろんオートマチック拳銃の製作にも力を入れ、いくつか有名なモデルを発表しましたが、やはりS&Wといえばリボルバーというイメージを拭いきれなかったのか、セールス的には他社にすっかり押されてしまっていました。
時代は流れ、従来の金属製の拳銃にかわって樹脂製のものが開発されるようになり、銃器市場にもシフトチェンジの傾向が見え始めました。
その先駆けのなったのがグロック17でした。
オーストリアのグロック社が発表したポリマーフレーム(樹脂製)オートマチック拳銃で、軽量かつ耐熱性、耐衝撃性にすぐれていることから、軍や警察などの公的機関に採用され、そのあと一般市場においても急激に人気を博しました。
グロック17よりも先にドイツのH&K社がポリマーフレーム拳銃を発表していましたが、市場に火を付けたのはグロック社のほうだったようです。
その流れに乗って他社からも陸続とポリマーフレーム拳銃が発表されていきましたが、ここでもS&W社は一歩後れを取ってしまったのです。
さらに、後れを取りながらもなんとか開発された「S&W シグマ」は、そのデザインがグロック17に酷似していたため、グロック社に提訴されるという事態を引き起こしてしまいました。
S&W社の信用はガタ落ちし、もはや時代遅れの銃器メーカーというイメージまでついてしまう始末でした。
そんな失意のどん底において起死回生を図るために発表されたのが、『M&P』だったのです。
これによりS&W社は再び表舞台に立つことになります。
M&P=Military&Policeという名称は、かつて同社の名リボルバーM10につけられたニックネームでした。
このことが、M&Pに対するS&W社の強い思い入れを感じさせます。
まさに再起をかけた渾身の一作だったといえるでしょう。
このような涙ぐましい物語をどうしても切り離して考えることができないせいか、東京マルイからM&Pが出るとなったときは、ほんとうに感動ものだったわけです。
前置きばかりがずいぶん長くなってしまいました。
ここから東京マルイ『S&W M&P9』をさらっとレビューしていきたいと思います。
箱を開ける前からすでに満足できてしまうのは、東京マルイさんならではですね。
パッケージのデザインが近未来アクションムービーの宣伝ポスターみたいでかっこいいです。
ふたを開けると、これまたすっきりしています。
箱詰めされているというより、展示されているといった感じです。
これもマルイさんならではの気遣い、おもてなしといったところでしょうか?
銃本体のデザインはほんとかっこいいです。
近未来的なシャープさを描きつつも、やわらかさも持ち合わせています。
グロックやH&Kとも一線を画する斬新なデザインとなっています。
色合いや質感ですが、WAのカーボンブラックヘビーウェイト樹脂と比べると、ちょっとおもちゃっぽいかなぁ?なんて思うのは筋違いです。
ポリマーフレーム拳銃というのは、実銃であってもどこかおもちゃっぽい感じがするものなんです。
金属製ではなく樹脂製なのですから。
持ってみた感触ですが、私としてはすごく好印象でした。
銃本体を後ろ側から見てみると、グリップの両サイドがわずかに膨らんでいます。
これによって、握ったときに手に吸いつきやすい感じがありました。
また、グリップを握ったときにちょうど親指の付け根あたりが当たる部分(パームスウェルグリップと呼ぶそうです)のサイズが変更できるようになっており、S、M、Lの3種類から自分の手の形や大きさに合わせて選ぶことができます。
このパームスウェルグリップはゴム製で、これも握りやすさの要因のひとつになっているのかもしれません。
次にトリガーですが、こちらは少し特徴的で、グロックなどと同じでセイフティ機構を備えたタイプのものです。
トリガー自体が二段階に分かれた機構になっており、下部分を引くと普通に射撃できますが、上部分を引こうとすると作動しないメカニズムになっています。
トリガーを引いてみた感触はちょっとかわっています。
弾力性があるというか、やわらかいプラスチックをグニグニと動かしたときのような感触です。
さらに、トリガーを引き切るまでの「遊び」が長く、しっかりじゅうぶんに引かないと、うまく射撃できません。
とくに片手で撃つときは狙いを定めにくいと思います。
この点が、『M&P9』でもっとも違和感のある部分だったように思います。
では、実際に撃ってみた感想を記していきたいと思います。
5月のゴールデンウィーク。
気温22度のガレージ内。
7メートルの距離に段ボール板を立て、そこに直径12センチのペーパーターゲットを張り付けて撃ってみました。
ブローバックスピードは速いです。
が、重さはそれほどありません。
軽快といった感じです。
620グラムという重量を考えるとこんなものかもしれません。
同じ東京マルイ製のXDM-40と比較すると、ブローバックスピードはたいして変わりませんが、リコイルではXDM-40のほうが圧倒的に重かったです。
集弾性はまずまずといったところでしょうか。
東京マルイのガスブロはどれも安定していて信頼できます。
スライドを引くと、チャンバーの横に調節ダイヤルが付いており、ホップ調整ができるようになっています。
このときは調整なしで撃ちましたが、弾道は安定していて、とくに問題なく真っすぐ飛んでくれました。
ただ先ほども書いたように、トリガーの遊びが長いため、慣れていないと精密射撃は難しいかと思います。
マガジンのガス供給も安定しています。
全弾撃ちつくすまでジャムは一度もありませんでした。
この点も東京マルイ製品の信頼性の高さをうかがわせます。
こんどは屋外へ出て20メートル先のターゲット(直径40センチくらい)に向けて撃ってみました。
おやっ?ちょっと弾道が不安定なものが…。
25発中ほとんどの弾はまっすぐ飛んでいったのですが、何発か左に逸れるものもありました。
しかし、これは集弾性の問題ではなく、銃の個体差か、あるいはこの銃の慣らしが足りないことが原因だろうと思われます。
これくらいはまったく問題ありません。
むしろ25発すべて完ぺきに真っすぐ飛んでいくことのほうが少ないです。
20メートルの距離で弾が逸れたのが数発だけという結果ですから、やはり東京マルイ製のガスブロはたいしたものだと言えるでしょう。
総評としては、5点中4点弱くらいかな?というのが感想です。
マイナスポイントというほどのところは見当たりません。
ただ、リコイルが期待していたよりも軽かったのと、トリガーの扱いが私にはちょっと難しい感じがしたというのがありました。
ゲームのサイドアームとしてはじゅうぶん使えるでしょう。
重量が620グラムしかないので、その点は扱いやすいかと思います。
もちろんデザインは言うことなしです。
ほんとかっこいいです(個人的な感想ですが)。
ひとつ追記しておきますと、この『S&W M&P9』が発売されたわずか4カ月後に、東京マルイは早くもバージョンちがいのものを発売しました。
『S&W M&P9 Vカスタム』です。
全体がブラックではなくFDEカラーになっており、サイトが通常のものとはちがって発光剤を塗ったナイトサイトが取り付けられているようです。
こちらもまた、なかなかかっこよくて、ついつい手を伸ばしてしまいたくなります。
東京マルイさんには財布の紐を緩められっぱなしです(笑)。