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火薬の歴史

核という次元の異なるエネルギーを利用した兵器が登場した現代においても、戦場の主役は依然として銃や砲、ミサイル、爆弾です。そして、これらに共通して使われているのが火薬です。

火薬が最初に登場したのは、6~7世紀頃の中国だといわれています。人類三大発明の一つに数えられることもある重要な発明ですが、誕生当初はすぐに軍事利用されたわけではありません。おそらく、爆竹のような形で使われていたと考えられています。

この最初の火薬は「黒色火薬」と呼ばれ、木炭・硫黄・硝酸カリウムを粉末にし、混合したものでした。

黒色火薬の登場

黒色火薬は、発火すると酸化剤である硝酸カリウムが酸素を放出し、その酸素が木炭や硫黄と結びついて激しく燃焼。その結果、二酸化炭素や窒素などの気体と大量の熱が発生し、急激に膨張し、この急激な膨張が、爆発という現象を引き起こすのです。

黒色火薬は湿気に弱いという性質があり、ある程度湿気を含むと発火しなくなりますが、発火さえしなければ化学的には比較的安定しているため、湿気った場合でも乾燥させれば再び使用できます。

また、直射日光に長時間さらされても、基本的には問題なく使用できます。

黒色火薬の樽

発火点は約300℃で、炎に触れれば確実に発火し、摩擦や静電気でも発火する危険性が高いため、保管には十分な注意が必要な火薬といえます。

この黒色火薬が兵器として使用された最初期の記録は、13世紀に各地へ遠征したモンゴル軍の兵器です。

イスラム世界へ進攻した際には、投石機で火薬弾を投射したという記録が残っており、日本においても、鎌倉時代末期の元寇で、九州に侵攻したモンゴル軍が「てつはう」と呼ばれる兵器を使用したことが記録されています。

これらはいずれも、鉄や陶器の容器に黒色火薬を詰め、導火線を取り付けて点火後に投げるもので、現在でいう手榴弾(グレネード)の原型にあたります。

その後、爆発エネルギーをより効率的に利用するため、火薬を狭い筒の中で炸裂させ、その燃焼ガスの圧力で弾丸を射出する「砲」や「銃」が登場しました。当然ながら、当初使用された火薬は黒色火薬でした。

しかし黒色火薬は、燃焼後に炭酸カリウムや硫酸カリウムなどの残留物、さらには未燃焼の火薬カスを多量に生じ、発射時には大量の白煙が発生するため、密集して射撃を行うと視界が遮られ、周囲が見えなくなるという欠点がありました。

燃焼速度を改善した褐色火薬

黒色火薬は、密閉してエネルギーを利用するには燃焼速度が速すぎるという問題があり、銃砲の炸薬としては多くの欠点を抱えていました。

その中でも特に問題だったのが「燃焼速度」です。この課題を改善するために開発されたのが褐色火薬でした。

黒色火薬の燃焼は、単に火が伝わるだけではありません。燃焼時に発生する衝撃波によって離れた部分の火薬まで連鎖的に発火する「爆轟」という現象が起こります。

そのため、性質としては「火薬」というより「爆薬」に近いものでした。結果として、強度の不足した銃身や砲身を破裂させ、暴発事故を引き起こすことも少なくありませんでした。

さらに、ライフル銃が普及すると、弾丸と銃身の隙間が小さくなり、腔内圧力が高まりやすくなります。瞬間的な圧力が過度に上昇する黒色火薬は、こうした構造には不向きでした。

銃や砲に求められるのは、弾丸が銃身・砲身を出るまでに十分な速度を得ることです。瞬間的な高圧はむしろ制御の妨げになります。

そこで、黒色火薬に使われていた木炭を、不完全炭化の褐炭に置き換えて燃焼速度を抑えた「褐色火薬」が登場しました。

もっとも、褐色火薬はあくまで「燃焼速度を調整した黒色火薬」にすぎません。

その他の欠点までは解決できず、やがてそれらの問題を一挙に改善した「無煙火薬」が登場すると、過渡期の存在として姿を消していきました。

煙のでない無煙火薬

1884年、黒色火薬特有の白煙や燃えカス、保管の難しさを解決する火薬として無煙火薬が登場します。

無煙火薬は「ニトロセルロース」を主原料とする火薬で、構成によって以下の種類に分類されます。

  • ニトロセルロースと安定剤のみで構成される「シングルベース火薬」
  • ニトログリセリンを加えた「ダブルベース火薬」
  • さらにニトログアニジンを加えた「トリプルベース火薬」

用途も異なり、拳銃弾や小銃弾にはシングルベース火薬、迫撃砲などには爆発力の高いダブルベース火薬、大威力と高い安定性が求められる大口径砲にはトリプルベース火薬が使用されています。

無煙火薬

ニトロセルロースは、植物繊維であるセルロース(主に綿)を硫酸と硝酸の混合酸で処理し、硝酸エステル化することで作られます。構成元素は炭素・水素・窒素・酸素のみで、理論上は燃焼後に無色透明の気体となります。

さらに、燃焼に必要な酸素を分子内に含んでいるため、水中などの無酸素状態でも反応が可能で、湿気の影響も受けにくいという特徴があります(自己燃焼性)。

その結果、煙がほとんど発生せず、燃えカスも極めて少ない「無煙火薬」となったのです。

ただし、綿火薬のままでは不安定で扱いづらいため、実際には安定剤などを加えて実用化されています。

無煙火薬は1890年頃から現在に至るまで広く使用され、今日「装薬」といえば、ほとんどの場合この無煙火薬を指します。2007年には、よりコンパクトで発砲炎の小さい改良型も開発されましたが、コストの問題から一般化には至っていません。

爆薬の開発

ここまで銃砲の装薬としての火薬の流れを見てきましたが、次に「爆破」を目的とする爆薬について触れておきます。

初期の火薬は、用途を問わず黒色火薬が使われていました。しかし、銃砲用装薬が進歩したのと同様に、爆破専用の爆薬も進化していきます。

黒色火薬に代わる最初の代表的な爆薬は、ニトログリセリンと、その実用化製品であるダイナマイトでしょう。

1864年に発見されたニトログリセリンは、極めて強力な爆発力を持つ一方、わずかな衝撃でも爆発する非常に不安定な物質でした。これを珪藻土に染み込ませ、安全性を大きく向上させたのが、アルフレッド・ノーベルが開発したダイナマイトです。

ダイナマイト

ダイナマイトは当初、土木工事用として開発されましたが、やがて軍事にも利用されるようになります。ただし兵器に直接組み込まれたというよりは、要塞の防壁を破壊したり、崖を爆破して進路を遮断したりと、土木用途の延長として使われることが多かったようです。

その後、本格的な軍用爆薬として威力を発揮したのがTNT火薬です。

トルエンの一部をニトロ基に置換して作られるトリニトロトルエン(TNT)は、高い爆発力を持ちながらも、衝撃や熱に対して比較的鈍感で、取り扱いやすいという特徴があります。そのため、民生用・軍事用の双方で広く使用されました。

さらにTNTや、RDX(トリメチレントリニトロアミン)、HMX(シクロテトラメチレンテトラニトラミン)、ニトロセルロース、ワックスなどを混合したC-4(プラスチック爆薬)は、非常に安定しており、火をつけても爆発せずにゆっくり燃える性質を持つとされています。

あとがき

ここで挙げたもの以外にも、より高い爆発力や安全性、扱いやすさを求めて、これまで数多くの火薬・爆薬が開発されてきました。

一時期使用され、現在は姿を消したものとしては「下瀬火薬」などが知られています。

火薬の歴史は、そのまま兵器の進化の歴史でもある――そう言っても過言ではないでしょう。

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