アメリカ軍において、テロリストを収容する場所として最も悪名高い場所が、グアンタナモ湾収容キャンプです。
この施設の存在はとくに秘密でもなく、海外ドラマでも「グアンタナモの収容所におくってやろうか!」などという台詞が出てくるくらいよく知られた場所です。
実際のところ、このグアンタナモ湾収容キャンプでは、常に問題が発生しており、アメリカでは社会問題化しています。
グアンタナモとは
それではこのグアンタナモ、一体どんな場所なのでしょうか。
そもそも、この場所はキューバ島にあり米西戦争が行われた1898年以来、実に100年以上アメリカが支配し続ける場所で、表記上はここが米軍基地収容所であっても、キューバ国内にあるのです。
そんな背景から、グアンタナモ湾収容キャンプはアメリカ軍の暗部、アメリカ軍の裏庭ともいわれており、アメリカ国民、キューバ国民ともに印象はよくありません。
そもそも、1962年に起きたキューバ危機のこともあって、今でもアメリカとキューバの仲が悪く、国交的には最悪の状態です。
核戦争一歩手前まですすんだ間柄ですから、キューバとしてもこの基地は、無くなってほしいに違いはありません。
アメリカはキューバより1903年にグアンタナモの永久租借権を獲得しており、この権利を振りかざして出て行く素振りもありません。
しかもこの権利を獲得した金額が、現在でいうところの30万円程度だというから驚きです。
こうして、アメリカにとって敵国にある軍事収容施設、グアンタナモは、キューバ側より基地を囲うように地雷を埋められ、水の供給もストップされている状態で、アメリカ軍も同じく地雷を多く埋め、自給自足によって成り立つ基地となっており、地上から近づけないようになっています。
(地雷原を抜けたとしても、凶悪なテロリストを収監しているこの施設の守りが薄いわけもなく、一般人が近寄ることは事実上不可能に近いでしょう)
さらに、この基地はアメリカの法律もキューバの法律も適用されず、日本にある沖縄の基地でも同じですが、アメリカの軍法のみが適用される治外法権です。
無法地帯
どの国の法律も通用せず、アメリカの軍法のみが適用されるグアンタナモ。
このグアンタナモ湾収容キャンプをアメリカはどう活用しているかというと、アメリカ国内でテロリストと思しき人物を捕らえた場合、アメリカ国内にいる限りアメリカの法律よって裁かれますが、その場合どうしても「アメリカ軍がききたいこと、行いたい事」ができないので、重要人物はさっさとこのキャンプに送られてしまいます。
まず弁護士を雇うなんて不可能でアメリカ軍のやりたい放題、収監者の地獄の始まりというわけです。
つまり、この施設に送ってしまえば、なんでももあり、それをメディアが取り上げるのも不可能、違法だといわれる事もないのです。
事実、この問題に関しては、隠そうともせず公表しており、政府自体が「拷問は行われている」と認めているのです。
その内容は、何日も眠らせない、裸のまま寒い部屋に放置する、水攻めなどといわれています。
世界基準は捕虜も人道的な扱いをし、拷問を無くそうというのが、ジュネーブ条約の取り決めだったわけですが、この条約を真っ向から破っているのがアメリカというわけです。
アメリカ軍はこの件について、「捕虜」でなく「犯罪者」であるからジュネーブ条約とは関係ないとしているが、苦しい言い訳にすぎません。
そもそも軍人でもない犯罪者を軍施設に送ること自体が国際的に違法なのですが、それに関しても収容している犯罪者は一般人ではなく戦闘員だから問題ないとしています。
ではなぜ黙認されているかと言えば、9.11の同時多発テロ以降、アメリカは「テロリストと戦争状態にある」としており、すべてはアメリカのテロ対策だからです。
一般市民を無差別に狙うテロリストに過敏になってしまったアメリカ国民はこの体制を黙認しているのです。
グアンタナモのいま
現在、グアンタナモでは、200人近い犯罪者が収容されていると言われていますが、彼らがどのような扱いを受けているか考えたくもありません。
9.11の同時多発テロ事件を起したアルカイダを筆頭に多くのテロ組織にとって、グアンタナモ湾収容キャンプはアメリカの非道さを象徴する施設となっており、これに対する反発がさらなるテロ事件を増加させている一面があるようです。
こうなると本末転倒でグアンタナモにテロリストを送れば送るほどアメリカ国民や諸外国がテロの危機にさらし、テロリストは恨みを募らせ、更なるテロが増加する悪循環に陥ってしまっているのです。
こうした背景からオバマ前大統領は「グアンタナモを閉鎖する」と口にはしたものの、見せかけだけで実行せずじまい。
当選時は絶大な人気を誇った大統領のイメージも日に日に悪くなっていったのです。
こうなると、グアンタナモ湾収容キャンプは廃止したほうが良い!と考える人が多いのも当然。
火のない場所に煙は立たないといいますか、とらえられた人々のスネに傷があるのは確かなようで、釈放されたテロリストは高い確率でテロ活動に復帰しているという報道もあります。
また、一番の問題はグアンタナモを閉鎖するなら、テロリストを何処に収監するかということです。
どのみち同様のテロリストを収監する施設は必要となることを考えると、グアンタナモ湾収容キャンプを廃止したところで事情は特にかわらないと考えられます。
グアンタナモ湾収容キャンプを恐れているのは、アメリカと戦争状態にある国の一般市民で、無実でも収監されれば拷問されてしまうこともあるわけですから、たまったものじゃありません。
テロと無関係だったにもかかわらず収監され、無実が判明し釈放された人間も実際にいて、映画化もされています。
「グアンタナモ、僕達が見た真実」は、2006年にイギリスで制作された映画で、2001年にアルカイダのメンバーと間違われグアンタナモに送られてしまったパキスタン系イギリス人の青年達が体験した事実をを映像化したノンフィクションものです。
この映画によると、彼らに「自分はアルカイダの一員である」と自白させる為に、拷問や証拠の捏造、イギリス大使館の外交官だと嘘をついた米軍兵士の尋問などが繰り返されたといいます。
そんな状況が、約3年間程続いたといいますから、生きているだけでも不思議といいますか、身の毛もよだつ恐ろしい話です。
(最終更新 2019/05/24)