ドッグファイトとは、空中を舞台に戦闘機による戦いのことを言いますが、最近ではミサイル技術の発達により、行われることは、ほぼ無くなっています。
しかし、過去の戦争などを題材にした映画や、アニメの世界で描かれる場合は頻繁に登場しています。
戦闘機でのドッグファイトで、最も有効とされる戦法は、敵に気が付かれる間に奇襲をかけ、相手が体制を立て直すまでに離脱するという戦法です。
このようなドッグファイトが始まったのは第1次世界大戦の頃で、当時、様々な空中戦法が生み出され、第2次世界大戦中に最も空中戦が盛んに行われました。
しかし、それは大戦初期の話で、最盛期を過ぎると、一撃離脱の戦法が盛んに行われるようになり、ドッグファイトが行われることは少なくなってきます。
ドッグファイト
この、ドッグファイトは戦闘機がジェット機ではなく、プロペラ機時代の頃がもっとも盛んで、実際にどういうものか知るには、スタジオジブリ作品の紅の豚を見ると分かりやすいと思います。
このアニメの中で、1対1でドッグファイトを行っており、お互いにしゃべりあったり拳銃や、物を投げつけるというシーンがコミカルに描かれていますが、ドッグファイト戦の初期の頃は、実際に行われていた戦い方法です。
元々航空機は偵察用に使われていた為、敵機を攻撃する武器等は一切持ち合わせていませんでした。
どの国の航空機も同じ役割だったので、お互いの国同士で偵察機が遭遇したら挨拶を交わす、ということも良くあった光景です。
ただし、アニメ中の表現は、超高度な運転技術が必要とされるので、熟練度が非常に高いエースパイロットで再現出来るか、どうかのレベル。あくまでもどういった戦いをしていたかは、参考までにと素直に作品を楽しむことをおすすめします。
現在の戦闘では、見つかる前に倒すことが前提ですが、1920年代は操縦技術に加えて、打ち合いをして相手を倒すというドッグファイト戦が主流となり、撃墜数を競い合う形となりました。
その中でアクロバット飛行をするために技術が生まれ、格闘戦と呼ばれる機関銃を撃ちあう戦いへ、進化をしていきました。
プロペラと機関銃
また、よく勘違いしやすいのが機銃の位置です。機関中はプロペラの後ろに搭載されています。プロペラより前や両翼に設置されていると思ってしまいがちですが、操縦席に近いところに設置をされています。
翼につければいいのではないのか、と思いますが、飛行機に乗るとわかるのですが、翼というものは飛行中、ものすごくうねります。
戦闘機より、大きい民間の飛行機でさえも、翼は薄く細く作られており、風を受けて飛んでいる姿を見ると、うねりは数十センチはあるのではないか、と思ってしまうほどの揺れです。
そこに機関銃を付けたとしても、狙いを定めるには相当な技量とタイミングが入ります。
また、機関銃が両翼に付いている場合は、目の前で交差する用に配置されているため、その部分に入らなければ射撃をしても当たることはありません。
狙って待つということは戦闘中は、そこまで余裕もなく、常に振動してしまうので、胴体部分につけることが余儀なくされます。
その点、機首につけると目の前にきた時にさえ、打てば当てることができるので、狙いを打ちやすいということにつながり、更に付いている砲身が自分の目線と同じところですので、感覚的に感じやすいというメリットがありませんが、難点としては目の前にプロペラが付いていることです。
ですが、アントニーフォッカーという人物が、プロペラと機関銃の発射間隔を同調させる技術を用い、搭載することで、後ろから撃てるようになりました。機関銃を打つときにプロペラが目の前にある場合は打たないという装置です。
先人の知恵と戦いの中にも伝統を重んじているのがプロペラ機による空中戦です。
B-29
その中でも名機とされる機体が存在します。B-29が有名でアメリカの機体です。移動距離が長く、搭載できる爆弾の量は6トン搭載可能という、空飛ぶ要塞です。なぜ猛威を振るったかというと、飛行距離もそうですが、飛行高度がその他のプロペラ機と違い、格段に高かった所があげられます。
自分より数段高い場所に存在しているので、他の航空機から見つけることは困難を極めます。さらに、その胴体はしっかりと防弾機能が搭載されているので、ミサイルでない限り撃ち落とすことは難しいほどです。
その他に日本にも、1945年に海軍に制式採用となった「紫電二十一型」と呼ばれるプロペラ機が存在し、機体性能はとても高く、早くそして大気圧に耐えられる設計となっています。
さらには搭載している機関銃は、どの機体よりも弾数が多く威力が高いものになっているので、操縦者の腕次第ではかなり機敏な動きを出来るような高性能な機体でしたが、操縦者や生産数が少ないために実際の戦闘への配備は少数となっています。
このプロペラ機や、戦闘機を扱う方は優秀な方が操縦しています。しかも、パイロットの体にかかる負荷が相当なものです、旅客機にも負荷がかかりますが、精々体重に対して、10kgから、20kg程度となります。
ですが、戦闘機乗りというものは実際の体重にかける7倍以上にも耐えられる用に訓練されていて、体重60kgだとしても、420kgの負荷が体ににかかります。そのような負荷に耐えられることを前提で、激しい移動を繰り返していました。
今現在でも、プロペラ機ではなく戦闘機にはなりますが、アクロバット飛行をみる事が可能で、世界各国にアクロバットチームが存在し、海軍基地などの航空ショーでその技術を披露されています。
プロペラ機の伝統を受け継ぐ技術ですので、様々な美しい軌跡を目で見ることが出来る貴重な機会です。
ダグラス A-1 スカイレイダー
最後に、紹介するプロペラ機は、ベトナム戦争を最後に一線を引く形となりますが、最後の最後まで伝説を残しているダグラス A-1 スカイレイダー攻撃機です。
厳密にはレシプロ機と呼ばれる機体ですが、爆撃機として運用され、なんでも投下することができるという、最強の破壊神として有名です。
有名な言葉で「便器以外はなんでも積める」と呼ばれ、実際には翼に信管を仕込んだ便器を積んで出撃した、というところで伝説となっています。
さらには、その時にジェット機と交戦し、なんと撃墜し、おどろくほどの戦果を上げ、その後、このプロペラ機は現役から去ることになりました。
プロペラ機の現在
ドッグファイトは、パイロットが磨き続けてきた技術を駆使した、空中の格闘戦から、一撃離脱、そしてステルスへと時代は移行していきます。
現代では、戦闘機の戦闘はなく、ミサイル攻撃が主で、ドッグファイトはほぼ無視されていると言っても良い状態ですが、しかし、やはり格闘戦の能力と機関砲の装備は必須で、なぜなら、用意したミサイルが、敵に必ずしも、当たるわけでもなく、無限にあるわけではありません。
もし、ミサイルがはずれたり、撃てる状態ではなく相手に接近を許してしまったら、必ず格闘戦となり、また、お互いのミサイルが発達しているので、ミサイルが着弾前に撃ち落とされるということも、当たり前のように発生します。
そうなると、どうしても格闘戦に移行しますので、現代も生き残るためには、高度な操縦技術とドッグファイト戦での勝利が出来る機体は、必須条件となっています。
現代でも、プロペラ機で活躍してるものもあり、数は少ないのですが、燃料代も安く運用コストも安いので重宝され、整備の面においても、ジェット機に比べて構造が単純なので、メカニックの負担も少なく、楽に運用することができます。
プロペラ機は、軍用で使われていても、現在、そのほとんどは、戦闘目的の運用から次第に連絡用や低空での哨戒警備といった、本来の使われていた、プロペラ機への用途へと戻っています。