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破片手榴弾と攻撃型手榴弾

映画やゲームでもおなじみの歩兵の武器、手榴弾は爆発することで対象を加害する小型の爆弾です。

手のひらサイズのこの爆弾は、ピンを抜いて投げると一定時間後にドカンと爆発、相手が吹っ飛ぶ光景はアクション映画やFPSが好きな人にはなじみの光景でしょう。

しかし、外見や爆発時のエフェクトが同じように見える手榴弾でも、実は効果や敵を殺傷する原理が全く違うことがあります。

手榴弾は大きく分けて2種類ある

手榴弾は大きく分けると「破片手榴弾」と「攻撃手榴弾」に分けられます。

非殺傷型の音響閃光手榴弾や、障害物破壊用の焼夷手榴弾、煙幕手榴弾など、軍用の手榴弾には数多くの種類がありますが、ひとまず手榴弾といえば、この破片手榴弾か攻撃手榴弾のことを指します。

この二つがどのように異なるのか、そして手榴弾がもたらす破壊はどの程度になるのか説明します。

破片手榴弾

破片手榴弾は比較的ポピュラーな手榴弾で、映画などで目にする物の多くはこちらです。

フラググレネード」とも呼ばれています。

このタイプは爆発によって外側の入れ物(弾殻と呼ばれる)を破砕し、破片をまき散らすことで周辺を攻撃します。

つまり、爆発そのものではなく、爆発のエネルギーによって金属の破片をばらまくことで殺傷する武器ということです。

有効範囲内であれば飛び散る破片一つ一つは、弾丸と同じぐらいの威力があり、生身の人間ではズダズダに切り裂かれます。

火薬の爆発によって外側の入れ物を破砕し、破片で周囲を破壊する爆弾は総じて「榴弾」と呼ばれており、航空機爆弾や大砲の砲弾として最も一般的です。

破片手榴弾はまさに「手で投げる榴弾」といえます。

現在、アメリカ軍で使われているM67手榴弾の場合、殺傷範囲が半径15m程度とかなり広く、5mに立っていれば致命傷は避けられません。

ときには、230m以上も破片が飛ぶこともあり、遠くから飛んできた手榴弾の破片が目に直撃して死亡した例があるほどです。

M67の場合、総重量が400gで、上手な人なら40m以上投げることが出来ますが、どれだけ遠くに手榴弾を投げても、予期せぬ破片が飛んでくる危険性があるので、投げたらすぐに伏せたり遮蔽物の陰に隠れたりして身を守る必要があります。

破片は生身の体に当たると危険ですが、貫通力はそれほどないので、金属や土嚢の陰に隠れれば身を守れます。

また、爆発の圧力は上に逃げるので、伏せれば3mの距離で爆発されても影響を受けずに済むこともあります。

身を隠せる状況で使用することから「防御手榴弾」の名前でも呼ばれています。

このほかに破片手榴弾から身を守る方法としては、小さい穴の中に蹴り込んだり、破片が貫通しない物を覆いかぶせたりするやり方があげられます。

マットレス程度の物でも手榴弾の破片は貫通せず、人間の体も同様に貫通しません。

戦争の歴史においては、仲間を守るために手榴弾に覆いかぶさって爆発と破片を受け止めてなくなった兵士が大勢いて、イラク戦争においてもこの方法で死を遂げたアメリカ軍の兵士が、少なくとも3人知られています。

現代の兵士が標準装備しているボディアーマーや、ヘルメットは手榴弾の破片を受け止めることが出来る物ですが、腹部の真下で爆発した場合はさすがに耐えきれません。

破片手榴弾は手投げ爆弾の歴史の中では最も古い手榴弾の原型ともいえるものです。

手榴弾といえば連想する「パイナップル」のような形のMk.2手榴弾は、第二次世界大戦時にアメリカ軍が使用した破片手榴弾です。

攻撃型手榴弾

もう一つの「攻撃型手榴弾」は、破片ではなく爆発時の衝撃波でダメージを与えるタイプの手榴弾です。

爆薬は爆発すると高温・高圧のガスへと変化して膨れ上がり、それにさらされた人間は目や耳といった敏感な器官を破壊され、表皮や肺に裂傷を負います。

特に呼吸器の出血、圧力による内臓の損傷が起れば致命傷です。

衝撃波で殺傷することから「衝撃手榴弾(コンカッショングレネード)」とも呼ばれています。

信管や安全レバー、炸薬など、基本的な部分は破片手榴弾と変わりありません。

しかし、破片手榴弾の外殻が鋼鉄製なのに対し、攻撃型手榴弾では防水加工したファイバーボード(木製繊維を固めて作った板)など構成されて、爆発しても破片がほとんど飛び散らないようになっています。

そのために殺傷半径は数m程度とかなり狭いのですが、予期しないほど広い範囲に破片が飛んでいく危険性も小さく、特に市街地での戦いには有効です。

市街地戦で屋内に相手が潜んでいるときは、手榴弾やその他の爆発物を放り込んで、相手を全滅させるか大ダメージを与えてから突入、掃討を行いますが、そうした場合には攻撃型手榴弾は特に使い勝手の良い武器です。

破片なら貫通しない物の陰に隠れることで防げますが、衝撃波は有効射程内なら障害物を回り込んで(回折)届くため、テーブルやソファなどがある室内でも逃げ場がなくなるためです。

それ以外にも、水の中にいる相手を攻撃するときにも使用されています。

手榴弾は水の中でも全く問題なく使用できるのですが、水中は抵抗が大きいので、破片手榴弾を使っても破片のスピードはすぐに落ちて、殺傷力が失われてしまいます。

代わりに空気よりも密度が高い水の中では、攻撃型手榴弾の衝撃波は空気中とは比べ物にならない威力を発揮し、水中にいる相手に著しいダメージを与えることが出来ます。

このため、海軍ではこっそりと侵入してくる敵のダイバーなどを迎え撃つため、攻撃型手榴弾を超小型爆雷として使うことがあります。

第二次世界大戦の映画でドイツ軍が使用している、木の柄が付いた独特な形のM24手榴弾は、破片などを飛ばさない攻撃型手榴弾です。

現代ではアメリカが開発したMK3A2手榴弾が攻撃型手榴弾のスタンダードとなっており、破片手榴弾と違って、破片を均一に飛ばす必要がないので、MK3A2では空き缶のような円筒形をしています。

中には攻撃と破片を使い分けられるタイプの手榴弾もあります。

ドイツ軍が使用しているDM51という手榴弾は、鋼鉄製のスリーブを装着すれば破片手榴弾、中身の爆薬の入れ物だけなら攻撃型手榴弾として使用できます

手榴弾の構造

手榴弾の種類や使用目的は、それぞれ異なるものの、使い方は「安全ピンを抜いて投げる」で一致しています。

手榴弾の構造は、爆薬とそれが入った本体容器、爆薬を起爆する信管から成り立っています。

手榴弾の上に突き出ている部分が信管で、ちょうど花瓶に花を生けるように、内部の爆薬に挿し込まれています。

信管に火をつけるのはバネが打ち付けられる衝撃で、普段は安全レバー(信管から横に出ているベロのようなもの)に抑え込まれ、安全ピンで留められています。

安全ピンを引き抜いても、レバーを手で押さえていればバネは抑え込まれたままですが、手を離せば解放されて信管に打ち付けられ、信管の遅延火薬が点火します。

この一連の動きは、密閉された部分で行われるため、外からは見えませんし、一度遅延火薬に点火されると爆発を止めることは出来ません。

セットされた遅延火薬が燃え尽きた時点で、起爆薬が点火し、爆薬を爆発、爆発までの時間は2~5秒で、信管の種類を交換することで調整することが出来ます。

手榴弾に使われているTNTやコンポジションBといった爆薬は感度が低いために、少々の衝撃では爆発せず、銃で撃っても穴が空くだけです。

手榴弾が爆発するときは意外と爆発そのものは小さく、炎もほとんど上がりません。

You Tubeなどで見るとわかりますが、爆音と共に煙はじけるだけで、一瞬だけオレンジ色の光が生じるほかは炎も出ません。

ひと昔前の映画で手榴弾の爆発時に派手な炎が上がるのは、実は意外と見栄えがしない手榴弾の爆発を、より威力があるように見せるためのエフェクトです。

実際のところ、破片が有するエネルギーは弾丸よりも小さく、銃弾を防護できる程度の装甲を持った乗り物には無力です。

しかし先述のように、破片型手榴弾なら破片が飛散しているので、物が破壊される範囲は見た目よりもはるかに広く、少々走った程度では逃れることはできず、逃れるためには伏せるか、固い物の陰に隠れなければなりません。

丸い形の破片手榴弾は鋼鉄の破片をまき散らす範囲が広い手榴弾で、缶みたいな形の攻撃型手榴弾は爆風で攻撃する範囲が狭い手榴弾、そしてどちらも炎はあまり出ず、硬い相手には意味がないという点が共通点が手榴弾全てに共通する特徴となっています。

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