UCAV(Unmanned Combat Air Vehicle)、アンマンド・コンバット・エア・ビークルは、戦闘型無人機のことで、ドローンとも呼ばれ、パイロットは搭乗せず、遠隔地から操作します。
人的被害を防ぐことができる無人機は、偵察や攻撃などに使われ、効率的に情報収集したり攻撃することができます。
現在、戦闘型無人機は、アメリカやロシアなどで開発が行われており、2014年にはイギリスとフランスが共同で開発を進めると発表しました。
2014年6月の時点で、600種類以上の戦闘型無人機があると言われています。
ドローンの日本での開発
日本でも、2014年、防衛省が国防を目的とした無人航空機を、日本国内において生産することを検討していると報道され、話題になりました。
日本企業の強い分野であるセンサー技術を活用し、ミサイル発射の探知などの情報収集に使うことが考えられています。
また、防衛省は、2015年度予算案で、アメリカの滞空型無人機グローバルホークの操縦システム購入費などに154億円を盛り込みました。
防衛省は、グローバルホークについては、攻撃能力を持たない情報収集用の無人機であり、攻撃機には転用できないと説明しています。
なお、軍事運用のための無人機とは別に、商用利用の無人機の開発も進んでいます。
無人機による宅配サービス
アメリカではアマゾンなどが無人機による宅配サービスを検討しています。
これについて、2015年の時点で、アメリカの連邦航空局(FAA)が規制をかける可能性が指摘されています。
規制案では、日中の利用に限ること、操作する人間が目視できる範囲でなければならないこと、などが盛り込まれる見込みです。
これでは宅配サービスに実用できない可能性があります。
戦闘型無人機
戦闘型無人機は、一定のミッションについて、 有人戦闘機の代替物となると予想されています。
例えば、敵地対空ミサイル(SAM)を破壊するというような、極めて危険の高い任務について、有人戦闘機ではなく、戦闘型無人機に対応させることが考えられます。
有人戦闘機によって行なうのは、人命を危険にさらすため人的被害のリスクが高いからです。
戦闘型無人機は、最近の中東の空爆でも投入され、一方で、誤爆による民間人の犠牲も問題となっています。
戦闘型無人機の開発については、開発費が膨大にかかるため、批判する声もあります。
一般論として言えば、戦闘型無人機の概念は、現代型の戦争に即した、費用対効果の高いアイデアで、勿論、まだ様々な開発・修正・調整作業が必要です。
しかし、今後10年間を考えると、諸費用の総額は、有人戦闘機より低いものとなるでしょう。
実際、無人機は最近ブームとなっており、世界的に市場規模が拡大しつつあります。
無人機の長所
- 有人戦闘機と比較して低いコストで販売されるため、軍隊は有人戦闘機を購入する場合と比べてより多くの機体を購入することが可能となること
- 戦闘や事故によって戦闘機のパイロットを生命、身体の危険にさらすことなく、重要な要衝に戦闘機を送ることができること
- 有人飛行機にあるような人間のパイロットに内在する制限を受けることがなく、機動性に優れている
- コックピットがないので、有人戦闘機と比べてステルス性能が上がること
- 有人飛行機と比べて、小型・軽量であるため、輸送コストを押さえられること
- 無人機はパイロット不在のため、給油の拠点が整えば、長時間の飛行が可能となりうること
無人機の短所
- 刻々と変化する戦闘状況に、戦闘機のプログラムの変更・制御がスムーズに機能しない場合があること
(敵軍の戦闘機による攻撃を防御・回避するために航路を変更した後に、目標設定変更が瞬時にできない場合がある。) - 有人戦闘機よりも典型的に小さいため、大きな貨物を積み込み輸送することができないこと
- 燃料の保管量に限界があるため、稼動範囲が狭くなりがちなこと
- 目的が限定されているため、汎用性がないこと
(有人戦闘機のような空対空戦闘や空中戦を行うことができません。) - 地上に墜落した場合に敵側に機体が奪われ、技術を分析されるおそれがあること
- 戦闘員以外の民間人を誤爆することが多いこと
ドローンによる誤爆
誤爆については、例えば、2013年12月、アメリカの無人機がイエメンで結婚式の車列を誤爆し、14人が死亡しました。
イエメンでは、アメリカとイエメンが、共同で無人機を用いて国際テロ組織アルカイダ系の武装組織「アラビア半島のアルカイダ」の掃討作戦 を展開しています。
アメリカは、アルカイダのメンバーがこの車列の車両に乗っているとの情報を得て爆撃したのですが、実際は、犠牲者の中にはそのようなメンバーはいませんでした。
情報不足の中で無人機を利用し、誤爆することは、反米感情をあおり、更なるテロを助長し加速させおそれがあります。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、2013年に無人機による攻撃は国際法に違反する疑いがあると指摘しました。
戦闘型無人機の操縦がパイロットに与える心理的影響についても、議論がされているところです。
無人機は、機体にパイロットが搭乗するのではなく、衛星経由でアメリカから遠隔操作されています。
コンピューターゲームのように、画面を見て、バーチャル感覚で攻撃を行います。
そのため、人を殺傷したという実感を持ちにくく、次第に生命に対するリスペクトを失っていくようです。
パイロットは、長期間戦地に派遣されることはなく、アメリカ本土にいながら、オフィスで操作します。
任務を終えればそのまま自宅に帰ることもでき、家族との生活を通常通り送ることもできます。
一方で、パイロットに与える心理的外傷ストレスは、有人戦闘機よりも無人機の方が深刻であるという研究結果も報告されています。
ドローンによる戦争
2013年7月 、世界を驚愕させるニュースが駆け巡りました。
ノースロップ・グラマン社(戦闘機や軍艦などを製造する大手の軍需メーカーで、本社はアメリカのバージニア州フェアファックス郡にあります。)が開発中のアメリカ海軍のステルス無人機、X-47Bは、アメリカのメリーランド州にある地上基地から発進し、バージニア州沖合の大西洋上にあった、空母ジョージ・ H・W.・ブッシュへの着艦に成功したというのです。
無人機の空母への着艦成功は、史上初の出来事でした。
長期間の訓練で経験を積んだパイロットでも、 洋上の空母に戦闘機を着艦させるのは至難の業であると言われています。
しかし、X47Bが史上初の着艦成功という事例を作ったことで、コンピューターソフトウエアであっても着艦という難しい任務を完遂 できることが証明されました。
戦闘型無人機については、これまでアメリカは他国に対する輸出を厳しく制限していましたが、 2015年2月、方針を転換し、 限定的に輸出を一部解禁すると報道されています。
他国に転売しないなどの条件を付加するようですが、軍需関連の企業はこの一部解禁を歓迎しており、イタリアやトルコが購入先候補として名乗りをあげているようです。
転売不可の条件を付けたとしても、どこまで守らせることができるのかは不明ですが、戦闘型無人機の潜在的リスクを考えると、輸出を解禁することにより、新たなリスクが高まるのではないかとの懸念が広がっています。
現在、戦闘型無人機だけで戦争を完了させることはでき無いため、まだ人間と、人間が操作する戦闘型無人機が戦場におけるオペレーションを分担しています。
しかし、将来、ロボットが人間の代わりに戦争をする時代が、確実に近づいていると言えるでしょう。