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コピーメーカーから独自色のある企業へ、ブラジルのトーラス社

ブラジルと言えば、どのようなイメージをもたれるでしょうか。

カーニバルの国、資源が豊富な国、徐々に力をつけてきた新興国など、さまざまなイメージが思い浮かぶことでしょう。

銃器メーカー、Taurus(読みはトーラス、タウラス、タウルスなど)は、そうした新興国ブラジルにあって、大きな発展と進化を遂げたメーカーです。

日本国内のミリタリーファンの間では「各社のライセンスを取得してコピー品を製造している銃器メーカー」というイメージを持たれることが多いTaurus社ですが、近年では独自設計のモデルや、新素材の積極的採用など、先進的な発想に加え、ブラジルの工業力の発展という後押しもあり、銃器市場において一定の存在を示す企業に成長しています。

コピーメーカー、トーラス

そもそも、Taurus社が現在まで発展した大きな理由は、その先進性と独創性にあります。

創業当初はブラジルの小さな町のツールメーカーでした、1940年代に入るとS&W製のリボルバーのコピーの製造を開始し、南米での銃器市場や銃器製造の基礎を開拓していきます。

1960年代後半には、アメリカの銃器市場への参入を目指しますが、成果が出ません。

所詮はコピー製品を製造していたメーカー、アメリカの大手銃器メーカーの製品と比べ、その品質は明らかに劣ったものだったのです。

その後は、S&Wの親会社によるTaurus社の買収、同傘下への参入があり、S&Wの優れたリボルバーのノウハウがTaurus社へと蓄積されていくことになります。

1970年代半ばには、ブラジル政府がベレッタ社製のハンドガンの採用を決定、同時に国内での製造を要望として出しました。

政府の決定により、Taurus社は下請けとして、ベレッタのハンドガン製造を開始しますが、この際のベレッタとの繋がりもあり、S&Wの親会社から独立することになります。

ブラジル国内でベレッタを製造するためのライセンスは1980年代になると失効しますが、ベレッタはTaurus社へ譲渡していた製造設備を売却しました。

これにより、Taurus社はS&Wとベレッタという大手メーカーの技術と設備を手に入れることになったのです。

アメリカの銃器市場へ

Taurus社は取得したノウハウを活かし、再度アメリカ銃器市場への参入を図ります。

アメリカ市場ではかつてのブラジル製の銃器のイメージである「安かろう、悪かろう」という不信感もあり、再度の参入も困難を極めます。

しかし、Taurus社は1980年代半ばのショットショーにて同社製銃器の無条件ライフタイム保障を宣言、この一件はアメリカの銃器メーカーにとって大きな衝撃となります。

当時の銃器業界において、無条件での保障期間は非常に短く、保障がある場合でも、様々な条件をクリアした場合のみ、保障が適用されることが一般的だったからです。

Taurus社の名前が広く知られるようになった理由は、無条件の保障だけではありません。

コピー製品においても、ライセンス時代に生産していた銃器の技術を活かし、本家には出来ない工夫をした単なるコピーに収まらないモデルになっていた点も、ユーザーから支持を受ける理由になりました。

有名なものではベレッタ製のオートM92をライセンス生産していた時代の技術を応用した「PT92」などがあります。

PT92とM92の大きな差異は、本家M92でスライド側に配置されていたセフティレバーをPT92では、フレーム側に配置している点があります。

もともと、ライセンスの都合で同じ配置を行うことが出来なかったのですが、この変更によりPT92ではハンマーをコックした状態で、セフティをかけるコック&ロックが可能になっています。

このため、セフティ時に自動でデコッキングされるM92よりも、緊急時のすばやい反応が出来るなどの利点があります。

発表当時は精度面や仕上げの不安が残されていましたが、現在では比較的解消され、アメリカ国内での売り上げは大成功と呼べるだけのものを収めています。

トーラスのオリジナル製品

現在では、ライセンス製品を改良したものだけでなくオリジナルの銃器も製造しています。

中でもS&W関係の傘下であった時代の技術を用いた大口径リボルバー「レイジングブル」は、老舗であり最大手の一つS&Wのリボルバーと比べて安価だったこともあり、もとよりアメリカ国内に多かった「大口径が好きなユーザー」達からの評価も高く、人気を博すと共にTaurus社をそれまでの粗悪な銃を作る下請け企業のイメージから、先進的な銃器を作るメーカーへとイメージを大きく変えました。

そのほかにも、レイジングブルでより成熟した技術を応用した「散弾を撃てるリボルバー」であるJudge(ジャッジ)なども、Taurus社のメイン製品の一つです。

この銃、外見はシリンダーがやたらと長い以外は普通のリボルバーと大差ないシルエットです。

しかし、使用できる弾薬がかなり変わっていて、細身のショットシェル「410番ゲージ」と通常のリボルバー用弾薬の.45ロングコルト弾が使用可能、バリエーションも多く、銃身下部にピカティニー規格のレイルマウントを配したモデルなど10種のモデルが販売されました。

現在では一部のモデルを同社製リボルバーのレイジングブルに似せたモデルに更新するなど、レイジングブル、ジャッジ共にTaurus社で力を入れている製品の一つであることが伺えます。

大口径のレイジングブルや散弾が撃てるジャッジシリーズなど、一見するとネタに走っているのでは?とさえ思える製品を開発・発表しているTaurus社ですが、射手やその家族に対する安全には一定以上の配慮をしているなど、老舗大手メーカーに負けない創意と工夫、配慮に富んだものを製造しています。

前述したレイジングブルシリーズでは、所有者以外の誤操作による誤射・事故を防ぐために鍵のようなものが付属しており、これを用いることでハンマー自体を動かないようにロックすることが可能になっています。

また、大口径弾の使用に対応するためにシリンダーのロックを二点式にするなどの対処をしています。

ジャッジシリーズはそもそもが車内や玄関先、屋内などのある程度閉鎖された空間での自衛・護衛用として開発されたものです。

ジャッジでは通常の銃弾用に銃身にはライフリングが切られており、銃身自体が散弾銃と比べて非常に短いため散弾銃と比べると至近距離でも広範囲に散らばります。

ソードオフショットガン以上に秘匿性が高くなるジャッジですが、ジャッジが使える散弾は410番ゲージという小型の鳥獣狩猟に使われる(散弾銃としては)非常に口径の小さな散弾です。

そのためソードオフショットガンと比べると火力は抑え目であるとされています。

小さなツールショップに始まり、S&W系列の傘下への参入、ベレッタのライセンス生産、アメリカの銃器市場への参入と続けてきたTaurus社は、現在も新しい製品を開発しています。

2015年には今までのオートとは違う「羽根」が付いたオート(※操作性の向上とかが目的だそうです。)を発表しました。

Taurus社はかつて傘下になったことのあるS&Wやライセンスを生産していたベレッタに比べると、一時期の評価の低さこそ払拭しましたが、まだまだ一歩遅れている企業です。

今後は予想をどう覆してくれるのか、楽しみな企業ではないでしょうか。

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