スナイパーライフルといえば、銃器の中で、もっとも正確さを問われる武器であり、その特性上、良くも悪くも歴史を動かすような事件にも関わってきました。
スナイパーライフルとは、スコープを用いて遠距離から狙撃するため、頬当てや、バイポッド(小さな三脚)を使い、しっかりと固定して扱う銃で、接近戦には不向き。
銃火器が登場した当時から、遠距離からターゲットを狙い撃つ、狙撃という概念は考えられ、第一時世界大戦を機に、狙撃手の多くが出現し活躍します。
当時、スナイパー専用の銃は無く、射撃に長けた腕利きの兵士が精度の良い銃を用いることで、遠距離からの狙撃を実現していました。
これが想像以上に戦果をあげたため、スナイパーの重要性が、軍関係者に広く認識されるようになります。
その後、第二次世界大戦頃には、専用の銃火器を開発され、狙撃兵という専門職とともに、その運用方法が確立し、戦略として重要な位置を占めるようになります。
スナイパーライフルの種類
よく映画に登場する、狙撃専用、超遠距離から射撃するライフルを活用し作戦を行うには、射撃手自体の充分な訓練や、銃の性能の他、スポッターと呼ばれる観察者や、独立した作戦などが必要となり、状況がかなり限定されます。
(要は暗殺には向くが、混戦時の運用は難しく、敵が近すぎる場合は扱いにくいし、単独行動には向くが、団体行動にはむいていない)
これに対し、ドラグノフなどマークスマンライフル(Designated Marksman Rifle)と呼ばれるものは、アサルトライフルをベースにしたものも多いため、弾薬や部品も小隊内で統一でき、近~中距離射撃で活躍するので、非常に扱いやすくなっています。
狙撃手の活躍で有名な漫画、ゴルゴ13の主人公、デューク東郷が持つ銃もM16というアメリカ軍が良く使うアサルトライフルの派生型であり、マークスマンライフルとしての側面ももっています。
(最も、連載当初は銃器にくわしくなかった筆者が、なんとなくM16を選んでしまったというのは有名な話ですが)
狙撃専用に開発されたスナイパーライフルに関しても、小さな弾丸を使う場合は、自然界の影響を受けやすいので、有効射程範囲は100~600メートルほど。
2キロくらいまでならば、当たられば致命傷を与えられるが、そこまで計算して射撃するのは、ほぼ不可能といわれています。
それに対して、専用の弾丸を使う場合は、その重い弾丸重量のお陰で飛躍的に射程が増加し、1キロ以上先の目標でも、命中を期待できます。
アンチマテリアルライフルとよばれる銃もそれにあたり、歩兵が装備できるボディアーマーなど、全て貫通させるほどの威力をもち、アンチマテリアル(対物)というだけあって、暗殺だけでなく破壊にも向く銃となっています。
ライフルの構造について
スナイパーライフルは、大きく分けて2種類の給弾方式が存在します。
1つは、ボルトアクション方式の狙撃銃。
これは一発一発弾をこめて発射するタイプで、構造が非常にシンプルです。
しかも安価で精度が高く、一発の精度を求める場合は、ボルトアクション方式の狙撃銃を使う事が多いです。
暗殺や長距離射撃に向きますし、警察が犯人を狙撃したい場合も、こちらが多く使われます。
しかし、欠点としては、連射には非常に不向きであるという事、弾をこめなおす時に標準がずれやすいという事があります。
つまり、先制攻撃や暗殺には使えても、多くの敵を相手にするには、全く向きません。
そのため、ボルトアクション狙撃銃を扱う場合は、敵に見つかった場合に備え、サブウェポンの装備が必須といえます。
それに対して、オートマチック方式のスナイパーライフルがあり、オートで装填されるために、連射性が高く、1発目をミスしても、すぐにリカバーできるなど扱いやすくなっています。
ただし、こちらの欠点はボルトアクション式より精度が劣る事、構造が複雑であり、コストも比較的高いという欠点があります。
どれくらい値段が高いかというと、1丁で100万円以上するのも当たり前というくらい高価で、これを軍用に多く配備しようとするには、それなりの資金力が必要となります。
重要なアタッチメント、光学照準器(スコープ)
長距離射撃を行うわけですから、肉眼でヒットさせるのは非常にむずかしく、スナイパーライフルが脚光を浴びた時点から、開発が急がれたスコープ。
現在は倍率が10倍から、50倍のものまで存在します。
ただ、倍率の高い50倍のスコープが最も素晴しいかというと、一概にはそうも言えません。
動かぬ的を狙う場合や、長距離射撃を行うには、確かに倍率が高いほうが良いですが、距離が近かったり、目標が動く場合は、倍率が高すぎると狙いにくいため、作戦や距離にあったスコープを装着した方が良い、というのが現状です。
また、どんなに倍率が高くても、自然界の影響を受けるため、弾丸は直線にまっすぐ飛ぶわけではなく、様々な要素を考慮しなくてはいけません。
これを、補佐するために人員を裂ける場合に登場するのがスポッター(観測手)であり、専用の照準機を装備することもあります。
また、夜間での狙撃を可能とする、暗視スコープや電子機器を内蔵し、弾道を計算してくれるシステムが内蔵されたスコープなども存在します。
有名な狙撃手
最も多く戦果をあげた狙撃手をあげるなら、まず、シモヘイヘの存在を無視できません。
彼は20世紀初頭に活躍したフィンランド軍のスナイパーですが、スナイパーライフルをつかった射殺数だけで、505人という記録を残しており、これを抜く記録を持つ者は今までに居ません。
元々は猟師だったそうですが、あまりの活躍ゆえ、敵からは「白い死神」と恐れられたそうです。
また射殺数だけでなく、狙撃訓練では20世紀初頭の武器でありながら、150メートルの距離からならば、1分に16発の射的に成功させたという記録も持ち、アイアンサイト(レンズが無いので倍率は無し)を使ってるにもかかわらず、300メートル以内ならば、確実に頭部にヒットさせられたといいます。
しかも彼は、スナイパーライフルだけでなく、サブマシンガンの名手であり、それもふくめれば1000人以上は軽く突破するほど、敵を射殺しています。
さらにもう一人あげるとするならば、有名な狙撃手として、クリスカイルがいます。
彼はアメリカ海軍特殊部隊、ネイビーシールズに属した人間であり、イラク戦争においては多大な戦果をあげ、イラク武装勢力からは「ラマディの悪魔」とおそれられた人物。
アルカイーダ系だけで200人近い戦闘員を射殺しており、見方からは頼もしくも、敵からは恐ろしく懸賞金さえかけられていました。
除隊後は、PMC(民間軍事会社)を設立したり、回想録を執筆してベストセラーになるなど、注目を集めるとともに、PTSDに悩む帰還兵のためのNPO団体などの設立にも尽力しました。
いずれにしても、スナイパーライフルというのは、銃としては非常に高価であるとともに精密で、扱う人間にも相応のテクニックを求められ、新兵には扱いにくい武器だといえるでしょう。
1発で戦況をかえてしまったり、大事件を起してしまう事もあるために、映画の題材やゲームにはよく登場する武器ですが、戦時に敵の捕虜となってしまった狙撃種には、悲惨な末路が待つと言われています。
それゆえに狙撃主は、テクニックだけでなく、メンタル面での強さも求められる兵科であり、PTSDに悩む兵士も少なくありません。