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ライフリングの歴史と原理

火薬の燃焼ガスを、一定方向に収束させてやることで金属チップを高速で射出し、相手にぶつける、いわゆる「銃」「砲」というものは9世紀頃からその原型が存在していました。

最初の銃は、片側を閉じた金属パイプに火薬と弾丸を詰め込み、横の小孔から火を付けて発射するというもので、狙いをつけるという事ができるようなものではなく、なんとなく敵の方向に向けて撃ち放つだけのものでした。

当然、燃焼ガスが横にも漏れますので効率が悪く、威力も火薬の量からすればかなり低いものでした。

By: Conan

さすがにこの形式は非効率だし、面倒くさいということで、まず銃把というパーツが付け加えられ、ついで引き金と着火装置の組み合わせが導入され、1500年台には我々がイメージするような銃の形、火縄銃(マッチロックガン)の形が出来上がります。

これで、標的に狙いを付けたまま、最小限の動作で発射する事はできるようになりましたが、まだまだ、銃弾の命中精度はひどいものがありました。

点火方式とは別の区分でマスケットという区分がありますが、これは砲身内部がツルッと真っ直ぐで、弾丸を筒先から込める「先込め式」の銃を意味しています。

日本で戦国期に活躍した火縄銃も全てこの「マスケット」という区分に入ります。

このマスケットでは、球形の鉛弾を発射するわけですが、この鉛弾、銃身を離れてからどう飛んで行くかは全く予想ができませんでした。

丸い球である鉛弾が高速で空気中を進むと、当然激しい空気抵抗を受けます。

人間の目にはおなじに見える大気も、実際は気圧の粗密があちこちにあり、湿度なども合わさって飛翔する弾丸が受ける抵抗というのは、複雑極まりないものになります。

結果、前進のエネルギーだけを与えられた鉛弾は、複雑な空気抵抗で全く予測不可能なずれ方をしながら飛んで行くことになります。

原理としてはちょうど、野球の変化球と近いかもしれませんが、滑腔砲のばあい、ボールにかかる回転が決まっていないため、銃ごとにカーブだったり、シンカー、フォークボール、とバラバラに飛んで行くのです。

これに、常に異なる大気の状態が加わると、精密射撃などという芸当はほぼ不可能でした。

実際、マスケットが主力武器だった頃の射撃戦は、歩兵による横列隊形で、一斉射撃して面で当てるという考え方の運用でした。

数を揃えて銃撃密度を上げないと、打撃力は無いに等しかったため、この時代の歩兵は「隊列を守って指示通りのタイミングで撃つこと」が何よりも重要視されました。

これを実現するために特に発達するのが「マーチング・バンド」のような軍楽ですが、これは別の話題なので措いておきましょう。

この、「確率の神様に祈ろう」というマスケットから「狙って当てる銃」に飛躍するために必要だったのが「ライフリング」という技術です。

先ほどマスケットの特徴は滑腔銃身だと述べましたが、この銃身内部に、螺旋状の「施条」を施し、そこを通る弾丸にキリモミ回転を与えて弾道を安定させようというのがこの技術の目的です。

ライフリングによって弾道が安定するのはジャイロ効果によります。

物体は、回転しているとその向きを安定させようという力が働きます。これは、回転速度が早く物体が重いほど強い力として働きますが、これを「ジャイロ効果」と呼び、各種飛翔体の姿勢制御やオートバランサーなどに利用されています。

身近なところでは、自転車が走行するとまっすぐ安定するのもジャイロ効果によるものです。(車輪が回転体になって車体の姿勢も安定させる)

弾丸においても、何らかの方法で強い回転を与えることができれば、一定方向を向いて飛んで行くようになるというわけです。

ライフリングで弾丸にキリモミ回転を与えれえば、弾丸はそのままの向きを保って飛んでいくので、まず弾道そのものが毎回安定して直進するようになります。

そして、球ではなく紡錘形の弾丸であれば、進行方向に対して尖った方向を向け続けられますから、空気を切り裂いて進めるようになり、大気の粗密の影響を比較的受けにくくなります。

ジャイロ効果自体と、弾丸方向安定による空気抵抗の低減、この二つが合わさって、ライフリングが施された銃では、飛躍的に命中精度を上げることができる、というのが予想されたのですが、実際にライフル銃が実用化するには、越えねばならない課題が幾つもありました。

その最たるものが、弾込めの面倒臭さでした。

ライフリングが有効に働くためには、ライフリングが施された銃身内径より弾丸が少し大きい必要があります。

発射の時は火薬の力で押し出すので良いのですが、先込め式の銃で銃身より大きい弾を装填するというのは、恐ろしく面倒な作業となります。

結果、連射速度が著しく落ちるため、一部の狩猟用銃などに採用されるぐらいでした。

後装式の銃ならば解決できるのですが、それが実用化されるためには金属製薬莢との実用化がが必要であり、それはもっと後の話になります。

その中で、フランス陸軍大尉の「クロード・エティエンヌ・ミニエー」という人が、ある弾丸を考案します。

後にミニエー弾と呼ばれるその弾丸は、紡錘形をしており、弾丸の後尾がえぐれていて、火薬の力を受けると僅かに膨らむという構造をしていました。

装填するときは銃身より小さく、発射時にわずかに膨らむ弾丸。

ライフリングが施された銃における装填の問題を見事にクリアしたこの弾丸は、紡錘形という形状と合わさって高い命中精度を実現し、それでいて装填速度に著しい問題が出なかったためすぐに実用化され、8年後にはミニエー弾を使用するミニエー銃がフランス陸軍の制式装備となります。

更には、イギリスやドイツなども競ってこの弾丸の特許を購入してライフル銃を生産、自軍に配備して、1860年までにはヨーロッパにおける基本装備がライフル銃に変わってしまいました。

どこの軍隊も、マスケット銃の命中精度の悪さには不満を抱いていたというのがよく分かる話です。

アンティーク品での実験になりますが、このミニエー銃の一つエンフィールド銃の試射では、100ヤードで2インチ(91.44mで約5センチ以内)という集弾性能を記録しているそうです。

これは従来のマスケット(45.72mで約12.7センチ)の4倍近い集弾率であり、体感的には全く違う武器と感じられるレベルでしょう。

命中精度の向上も飛躍的でしたが、弾道が安定直進するようになると有効射程も大幅に延伸します。

具体的には、マスケットで50~100ヤード程度だったものが300ヤードまで伸びました。

命中精度が4倍近く向上し、射程も3倍以上伸びたわけですから、もはや同じ運用にはなりません。

これ以降、歩兵の戦闘は掩蔽を極力利用しながら投影面積を減らし、当てられずに当てるということを考えたものに変化していきます。

そして、もはや人の運動能力や馬の大きさで銃撃を躱しながら突撃することはほぼ不可能となり、近接戦闘をメインとする兵や騎兵などは、戦場から姿を消していくこととなりました。

こうして銃は、「狙えばちゃんと当たる」武器となり、主力兵装としての地位を確固たるものにします。

この後、スナイドル銃、ドライゼ銃、シャスポー銃などの過渡期を経て後装式の銃が登場すると、ライフル銃は連射速度と命中精度、威力を兼ね備えたものとなり、戦場は完全に銃と砲と爆弾がぶつかる場所になります。

ライフリングの完成を以って、銃という武器は一応の完成品となった、そう言っても過言ではないぐらい、重要な技術だったといえるでしょう。

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