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日本の防空の要を担う、F-2戦闘機

2000年に航空自衛隊に配備され、現在も日本の防空の要を担っている戦闘機、F-2。

当時、テレビニュースなどでも大きく取り上げられたため、あの青の濃淡で表された独特な洋上迷彩には、今でも見覚えがある人も多いはずだ。

そんなF-2だが、開発に多大な支障があったことは有名だ。

By: nubobo

まず、それまで航空自衛隊機として配備されていたF-1の後継機として、次期支援戦闘機計画が始まり、当初は開発のすべてを国内でまかなう、いわゆる「純国産機」が予定されていた。

しかし時は80年代、まさに深刻な日米経済摩擦の真っ只中。

日本に対する米国の貿易赤字は、けっして無視できない金額にまでふくれ上がっており、ジャパンバッシングの機運が米国中に満ち満ちていた。

そのタイミングでの日本の「純国産機開発計画」の発足は、日本車に加え、更にアメリカ経済を揺るがしかねない脅威、と見られても不思議ではなかったかもしれない。

ただちに米国は、日本に対し政治的圧力をかける。

現在、米国が一方的に損害をこうむっているのだという日米貿易に関して、日本に対して不利な関税をかけようというのだ。

当然この圧力には日本側も対抗したが、米国の過剰反応から、さらに大規模な経済問題にまで発展してしまい、「日本国と米国の敵対関係」というような図式を描くにまで至ってしまった。

そして、ついにはとうとう日本側が「純国産機」の開発を諦める形になってしまったのである。
(ちなみにこの米国の圧力とは日本において「スーパー301条」と称されているもので、これは当時アメリカ国内の経済学者からも批判の声が上がり、現在でもたびたび国際協定であるGATTに違反しているのではと指摘されるなど、ジャパンバッシングのための悪法とも呼べるものである。)

F-16をベースに日米共同開発

結局その後は、白紙に戻った純国産計画の代わりに、航空自衛隊へ配備する次世代機の開発は、米国のF-16戦闘機をベースに日米共同でおこなうという形になった。

しかしその際の契約内容も、「日本は米国に対しF-16に用いられた諸々の技術に対し料金を支払うこと」「日本は米国が望む技術を全て無償で譲り渡すこと」という、日本にとって不平等きわまりないものだった。

そのとき日本側が提供した技術は、「新素材である炭素複合繊維による主翼の一体成型技術」、「世界最新鋭のフェイズド・アレイ・レーダー」など。

どれも日本の最新技術であった。

しかし米国は、その後も日本へ圧力をかける。

とうに日本への技術視察を終え、お互いの開発も佳境にはいったというところで、突然アメリカ議会から「機体の制御を行うためのソースコードの提供は行わない」との通達があったのである。

他にも「機体生産における役割は米国がかなりの割合を占める」、さらに日本では技術的に開発が不可能であるといえる「エンジン技術の供与を認めない」など、とにかく技術的にも経済的にも日本の痛いところをついてくるものであった。

エンジンなし、機体制御システムなし、金ばかりかかる。

失意の日本の手元に残ったのは”ガワ”だけのF-16。

飛べないといっても、ハンガークイーンとすら呼べないシロモノだ。

せいぜい博物館やら記念館やらに飾られるのが関の山の、F-16の形をしたただのハリボテだった。

しかしここでは終われない。

単独でのソースコードの開発

国内開発を断念させられ、あげくの果てに技術を譲った見返りが、超高価な戦闘機の置き物ではお話にならないのだ。

その後、一枚岩ではなかった米国内での紆余曲折を経て、日本にとって最も致命的だったエンジン部分の技術供与が決定された。

エンジンは日本国内でライセンス生産される事になったのだが、依然として生産コストの高沸とソースコードの問題は残った。

これにより国内メーカーは、日本が占める生産割合部分のコスト削減に躍起になり、日本の技術者たちは機体自体の開発に加え、自力でソースコードを1から開発することにまで、心血を注がなくてはならなくなったのである。

しかし、日本側の技術部分においてF-2開発になにも支障がなかったのかというと、もちろんそうではない。

例えば日本が開発した、フェイズド・アレイ・レーダーには、致命的な不具合がいくつも見つかった。

当時、マスコミでも取り上げられていたが、「レーダーのモードを空対空に切り替えると目視と大差ない程度にまで探知能力が著しく低下する」「急激な機動をおこなうとターゲットへのロックオンが外れてしまう」「とらえたターゲットが突然レーダーから消える」といった、レーダーそのものの信ぴょう性を覆しかねない問題点がつぎつぎに浮上してきたのである。

また、得意の炭素複合繊維技術にも見逃せない問題があった。

主翼のフラッター部分に、微小なクラック(ひび)が見つかったり、垂直尾翼には強度不足が確認されたのだ。

新しい挑戦である日本側最新技術による改良点に不具合が多発したため、一時はベースとなったF-16にも劣る欠陥品とまで揶揄されたが、その後、改善を重ねていくことで、現在はほとんどの問題点は解消されている。

当時の米国からの圧力は、国内での戦闘機開発そのものが頓挫してしまってもおかしくない内容だったにも関わらず、その後F-2は、1995年には初めて空を飛んでいる。

開発開始からものの10年で、運用可能な状態まで辿り着いたのである。

F-2戦闘機の信頼性

また、現在までの運用において、F-2はかなりの信頼性をも我々に示している。

まだ記憶に新しい2007年の大事故は、機体の”機首上下方向の姿勢変化を感知するジャイロ”と、”横回転方向を感知するジャイロ”の配線を逆に接続してしまうという、誤った整備によって発生し、テストパイロット2名が重症に陥るという惨事を引き起こしたが、死者を出すには至らなかった。

さらに、翌2008年の訓練中には操縦桿が折れるといったトラブルがあったが、こちらはパイロットが無事に着陸している。

そして配備から15年たつ現在までに、90機程のF-2はその2件の事故しか起こしていない。

By: keiyac

F-2と同時期に米国で開発され、2003年から順次配備された190機の世界最新鋭機F-22は、現在までに4件の事故を起こしているが、うち2件は死亡事故、もう1件は事故原因が不明のままである。

F-22に限らず他の機体と比べても、10年以上の運用において、機体そのものの欠陥や、パイロットの操縦ミスといった原因からの事故が発生していないことは、性能差や飛行時間の違いなどを加味したうえでも、特筆に値する点である。

もちろん、F-2の特徴は航空機に絶対必要な安定性や、信頼性といった基本にはとどまらない。

日本の国防は世界中ほとんどの他国と比べて少々特殊なもので、日本への外国からの侵入ルートは、必ず海上であることがあげられる。

そのため海上での敵勢力迎撃を想定したF-2において、小型の機体でありながら主要な兵装である空対艦ミサイルを最大4基搭載できる、というポテンシャルは、まさに先の洋上迷彩とあわせて海上での戦闘で真価を発揮する仕様である。

ここまで海上での作戦遂行能力に特化した戦闘機は世界でも他に類を見ない。

F-2の他国機に追随を許さないほどの対艦攻撃力と、4基もの空対艦ミサイルを抱えながらも高い機動性を維持できる点、搭載可能な空対空ミサイルの性能から得られる決して低くない空戦能力は、海上からの脅威を退くに良好な能力を有している。

もちろん、F-2そのもののみにとどまらず、開発で培った技術すらも無駄にはならなかった。

米国にただ献上するような形になってしまった炭素系複合繊維技術は、現在も日本が先駆しており、ボーイング787の開発においては、主にその「主翼の一体成型技術」をいかんなく発揮する形でもって、機体開発の大部分を担当、ボーイング社自身と同じ割合で米国より開発を任されるという機会を得た。

日本の航空技術の発展や防空運用において、F-2は現在もけっして欠陥機とは断じることができない。

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