モデルとなっている実銃は、イギリスの銃器メーカーであるアキュラシー・インターナショナル社開発のL96A1です。
L96A1は、PMライフルという名称で同社が開発、後にイギリス軍で行われたトライアルに勝利し、L96A1という名称の制式採用ライフルとなりました。
その後のスウェーデンで行われたトライアルで勝利するために、AW(アークティク・ウォーフェア)ライフルへと改良され、寒冷地での動作などに対応出来るようにされています。
基本的にはボルトアクション方式の狙撃銃ですが、当時としては珍しいストック構造など、外見的な特徴もさることながら高い精度や、バレルが容易に交換できる点、折りたたみ可能なフォールディングストックを装備したモデルなど、多様なバリエーションを有する点から、世界中の軍隊、警察で採用されることになりました。
ローディングエスカレーター機構
エアガンの同種モデルでは東京マルイの当エアガン以外にも、マルゼンから発売されているAPSシリーズのバリエーションモデルであるAPS-type96などがあります。
東京マルイが発売しているL96AWSが、今までのL96モチーフのエアガンと大きく異なる点ですが、実銃のマガジン位置ではエアガンで必要なシリンダ長を確保できないため、実際のマガジン位置よりも前方のストック内部にボックスマガジンを配置するスタイルが一般的(マルゼンのAPS-type96でもその方式を採用しています)でした。
しかし、マルイのL96AWSでは新たにローディングエスカレーター機構を導入し、実銃同様のマガジン位置を再現することに成功しました。
この、ローディングエスカレーターの仕組みは、マルイのエアコッキングガンとほぼ同じ仕組みで、全長が長くなっているだけと考えてもらえればほぼ間違いありません。
ストック内部、チャンバーの真下からマガジンの給弾部までを長いレール上のものでルートを確保しており、シリンダーをコッキングするのに合わせてその内部を通り、BB弾をチャンバーまで送り込むという方法です。
マガジンの上部にもスリットが入っており、ボルトをコッキングするとシリンダーと、接続されたノズルプレートがそのスリットに入り込み、BB弾をレール内へと送り出します。
あとはボルトを戻すのに合わせて、プレートがBB弾をチャンバーまで送り込み、装填完了というプロセスになっています。
ルート自体はそれなりに長いですが、レールはコの字型のプレートで左右から挟み、[ ]のような形になっており、よほどの事が無ければレールからBB弾が外れてストック内部に転がるということはありません。
東京マルイ L96AWSの外観
L96AWSではストックのカラーがブラックとODの2色が発売されています。
VSR-10のように、ストックのカラーが違うと仕様が一部違うということもなく、カラー以外の違いは一切ありません。
L96の外見上最大の特徴は、サムホールを持ったストレートストックですが、実銃とは違い内部のアルミニウム製の芯材は一体型ではありません。
トリガー周りには金属製の芯材が入っていますが、後部はほぼ空洞、前部は可変HOP調整用のパーツを入れるためプラスチック+一部金属の芯材になっています。
前部下面には、可変HOP調整用の大きなツマミがありますが、一段下がっているため何かにぶつかって調整がずれるといったことは少ないかと思います。
また、ストックの先端部分には、バイポッド装備用のアタッチメントが付属しているため、同社製のベルサタイプのバイポッドが、無加工で取り付け可能になっています。
また、スイベル装備用のアダプターも装備しているのでハリスタイプのものもサイズが合う場合は装着可能で、マガジンキャッチは一般的なレバーを押しながら引くと取れるタイプで、ストック側に内臓する形になっています。
結構サイズがタイトに作られているため、レバーを押しただけでマガジンが落ちたりすることは無く、チークピースは、ネジを緩めることにより無段階、バットプレートは挟み込むパーツの枚数で、3段階で調整が可能になっています。
L96AWSのバレルについて
アウターバレルは実銃のフローティングバレルと違い、30ミリのブルバレルになっています。
L96AWSは消音モデルをイメージしていますが、当然バレル自体に消音効果はありません。
マズルにはVSR-10 Gスペックと同じ規格のネジが切ってあります。
そのため、14ミリ逆ネジのサプレッサーなどを装備する場合には、VSR-10Gスペック用のアダプターを購入する必要があります。
ただし、東京マルイ純正のものはあくまで、同社のサプレッサーを装備するためのネジ規格になっているため、他社メーカー製の物を装着することは出来ない事があります。
無理に付けようとするとネジが潰れたりすることもあるので注意してください。
また、マズルのネジ規格が同じのためGスペックに付属しているサプレッサーを無加工で装備することが可能です。
Gスペックのサプレッサーは消音スポンジ+バッフルプレートの消音構造をしているためか消音効果も結構高く(販売店には置いてない場合が大半のため購入には手間がありますが)オススメです。
インナーバレルは東京マルイ共通の真鍮製バレルです。
その他の注意点
チャンバー周りはVSR-10のような左右から挟み込むタイプから、前後で挟むタイプに変更されており、固定するネジもプラスネジから、六角のボルトに変更されています。
また、ボルトを引いた際にシリンダー側に、BB弾が落ち込んでしまうのを防ぐためのパーツが左右についているため、分解する際には無くさないように注意が必要です。
シリンダーはVSR-10よりも2ミリ程度細くなっており、両モデルに互換性はありません。
セフティはボルトハンドル後端部右側にあり、後ろに倒すとオン、前に倒すとオフです。
セフティをオンにするとトリガーがロックされるだけではなく、ボルトハンドル自体もロックされ、コッキングが出来なくなる仕組みになっており、レシーバーは金属製です。
ボルトストップレバーが稼動しますが、これはダミーになっています。
上部には20ミリのレイルマウントが装備されているほか、この20ミリレイルマウントを取り外すと、11ミリ幅のレイルマウントが露出します。
20ミリレイルマウントが装備されているため、マウントを別に用意することなく、スコープなどの光学サイトを装備することが可能ですが、高さが合わない、スコープのレンズ径自体が大きすぎて乗らない場合などには、ハイマウントリングや、ハイマウントベースを使用すると改善します。
L96AWSの使用感
全体的な使用感ですが、コッキングもスムーズで精度的にも非常に安定しているように感じました。
しかし、その一方で不満・不安な点も多く出てきました。
大きな不安点として、装填周りのパーツの強度です。
ローディングエスカレーター自体はそう簡単に壊れるものでは無いと思いますが、コッキング時にBB弾を押し出す役割を持つノズルプレートが少し負荷がかかった時点で折れてしまうように感じました。
それ以外にも、発射音自体は非常に小さいのに撃つたびに内部で反響するような音がします。
ストック後方内部がほぼ空洞になっているため、ここで反響してしまっているようです。
そのため、これを解消するためにはストック後方内部の空洞を全てパテなどで埋める必要があります。
そうなると元からかなり重量があることに加え更に重くなります。
正直なところ、ゲームで使う場合に特に拘りが無い場合ならばこれよりもVSR-10 Gスペックのほうが安定していると思います。
L96AWSは革新的な部分が多くあり、可変HOPの調整がしにくいなど、VSR-10で失敗していた点を上手く改善していることもあり、余計に残念な部分が目立ってしまっているような印象を受けました。
とはいえ、内部部品自体はマルイ製のため安定感はかなり良好です。
そのため、ユーザー自身が不満に感じた点を自分で何とか改善出来れば、かなり魅力的なエアガンだと思います。