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戦闘間隊員の一般心得

陸上自衛隊では、戦闘間隊員一般の心得、という「こうしなさいよ」というガイドラインのようなものがあり、戦闘時に各隊員が注意すべき項目が11か条にまとめられています。

これは旧日本軍時代から、歩兵操典の戦闘間兵一般の心得を現代風にアレンジしたものですが、各国軍隊と比較しても見劣りしないものとなっているとおもいます。

日本はこうした教範、教則類が旧軍時代からほとんど変わっておらず、また「これは古いから新しくしよう」という気風がありません。

アメリカ軍は戦闘の経験をフィードバックして、教範教則類はしょっちゅう変わるのが当たり前みたいです。

しかし、突き詰めて考えれば日本の教範教則類は完成されたものが多く、全ての戦闘にまんべんなくあてはまるエレメント、主要素が書いてあるのに対し、アメリカ軍は「もうこんなもの時代遅れだ!」とコロコロ変えているといった感じです。

日本の自衛隊は共通教育として攻撃、突撃を非常に重視して教育しています。

「もう突撃なんて時代遅れなんじゃないか?」という意見もあるところですが、いかんなく攻撃精神を発揮し、恐怖を克服して敵に突っ込んでいく、しかし一方で軍隊は攻撃精神だけでなんとでもなるのではなく、火の雨を降らす特科火力、陣前障害を処理して突撃路を開通する工兵、衝撃力を発揮する戦車などさまざまな職種が有機的に絡み合い、最大効果を発揮させるという共同の精神を涵養するうえでは非常に重要なことではないかと。

アメリカ軍は現代戦に適応した訓練をし、現代戦には強いかもしれませんが、根本的なことをいつしか忘れていってしまう軍隊、であるのかもしれません。

それでは戦闘間隊員一般の心得について、説明していきます。

戦闘間隊員一般の心得

以上、11項目ですが、1つ1つについて説明していきます。

1、使命感に徹し、あくまで任務を遂行せよ。

これはどんなに不利になっても、己の使命を自覚し、何が何でも任務を遂行しなさい、という教えです、結構重要な項目で、これは戦況が苦しいときは投稿したくなりますし、戦況が有利な場合でも慢心して任務に集中しなくなるという恐れを極限まで排除せよ、という事です。

戦況がよかろうが、悪かろうが、己に与えられた任務、持ち場を淡々とこなせ、という事です。

2、常に厳正な規律を維持せよ。

これも戦況の良し悪しによって変わってくるものですし、規律の乱れた軍隊は、もはや軍隊ではありません。

生死を共にする軍隊ですから、自分勝手な行動、例えば禁止されている夜間の喫煙は光あふれる街ではまったく目立ちませんが、漆黒の森や郊外では煌々ときらめき、あっという間に所在がばれてしまいます。

こうなれば陣地がばれ、仲間数百人の命を危険にさらす行為となります。

3、常に士気旺盛にして、強靭不屈かつ勇猛果敢に行動せよ。

士気、やる気がないと軍隊の行動はきつい物が多いので、あっという間に心が折れてしまいます。

また戦闘はたいていの場合、悲惨で、後ろめたくて、国家防衛という大義を忘れたまま任務を行えば、あっという間に心をむしばまれてしまいます。

士気を保つという事が非常に大切であり、恐怖を克服して行動しなければ達成できない任務が多い、という事です。

4、自ら進んで指揮官の掌握下に入れ。

5、相互に協同連携して戦闘せよ。

似ている事なので、2つまとめて説明します。

指揮官の掌握化に入ることが、なぜ重要なのか?

それは1人1人の力が集結して10人、連隊クラスで700人の人間が1人の人間のように行動できれば、その効果は倍々になるからです。

例えば攻撃の際、一人だけパラパラと射撃するのと、10人が号令により一斉に射撃するのと、どちらの方が制圧効果は高いでしょうか?

また1班、2班が攻撃前進する際、1班は射撃して前進支援、2班は前進、今度は2班が射撃して1班が前進、という風に連携すればスムーズに前進する事ができます。

また、対戦車火器の射撃タイミングにしても、新兵は戦車を撃破したい、という思いが強く、過早に射撃を開始してしまう傾向がありますがこれを班長が射撃統制することにより、絶対当たる位置かつ撃破しやすい側面や後方に向け射撃ができ、撃破率も高まります。

組織力を発揮するためにも、指揮官の掌握下に入り、互いに相互連携するのは大切なことなのです。

6、旺盛な企図心をもって絶えず創意工夫せよ。

要は「基本を守りつつも、基本が通じないなら応用しなさい」という事ですね。

何が何でも基本基礎ばかり守っていても、うまくいかなかい場合もある。

そういう場合は、頭を使って効果を発揮できるやり方でやりなさい、という事です。

例えば砂地ではいくら掘っても小銃用掩体は完成しません。

そういう場合は土嚢を使用して小銃用掩体を作ったりして所要の効果を発揮できるようにしなさい、という事です。

あんまり、自衛官が得意な項目ではないような感じがします。

7、常に情報資料を収集し、速やかに報告せよ。

情報資料「敵方から装軌音がした」「敵兵がガスマスクを装着し始めた」などなどの情報資料は積極的に収集するとともに、指揮官、隊本部に伝えるようにします。

その情報を基に、指揮官はこれが何の兆候なのかを推測し、適切な命令をすることができます。

戦車音がしたなら戦車部隊が集結し、攻撃を企図しているのではないか、「ガスマスクを装着し始めた」ということはこれからガス攻撃を企図しているのではないか、我が方もガス攻撃に備えるためガスマスク装着を命じる必要がある。

など、現場で判断できること以外にも、情報資料が一つ一つ集まることによって、敵が何を企図しているのかを探ることができます。

サラリーマンのホウレンソウに似ているものかもしれません。

8、常に警戒を怠るな。

戦闘はいつ、どこでどう始まるかわからない、敵とばったり出会ったとき弾倉は装填してない、小銃はリュックにくくりつけてある、銃剣はリュックにしまってあるではあっという間に殺されます。

きわめて接敵に可能性が高い地域でも、隊員が相互警戒を怠っていたり、据銃せず負いひもを使用して銃を担いでいたりなど、してはならないという事です。

また警戒心を働かせていないと、潜んでいる敵兵にはまず気が付かない、という点もあると思います。

9、戦闘間負傷しても、自ら手段を尽くして戦闘を継続せよ。

自衛隊において、もっとも問題でいつまでたっても改善しない点です。

自衛隊では最近ようやく止血帯が標準装備となってきましたが、使い方を知らない隊員も多く、また「何故止血帯が有効なのか」についても理解に乏しい隊員が多いように見受けます。

今の自衛隊は撃たれたり大けがをした際、初期治療を重視しておらず後方に至急搬送、となっています。

初期治療を3分以内にしなければいけない重症患者に対して「急いで後方に運べ」では助かるものも助からなくなります。

また、後方に移送する手段もアンビと呼ばれるペラペラ装甲の車両しかなく、前線まで出てきたら間違いなく故障してしまうような代物です。

この心得があるから、初期治療をおろそかにしてきたのか、改善すべき点であると思います。

しかし、機関銃を側防火器として運用しており、自分が射撃を止めれば敵兵の侵入を許すような場合、たとえ手がもげ足がもげようが、機関銃の射撃は死んでも止めるな、という教えでもあるかと思います。

10、敵の宣伝に乗ぜられるな。

敵側が有利だという、敵の宣伝専門部隊が流す内容に乗せられるな、という事です。

これは太平洋戦争中にも米軍が空から紙をまいて「ニホンノミナサン、アメリカハ・・・」というたぐいの宣伝をすると、気の弱い人はやる気をなくしてしまう、というのを狙ったものです。

太平洋戦争時にまかれたものは嘘の情報ではなく、ほとんど本当の事だったようですが。

現在ではイスラム国が広報専門部隊を作って、「イスラム国に参加しよう、イスラム国に逆らうとひどい目に合う、我々はこんなに強い!」という内容を宣伝して味方を獲得したり、敵の行動をけん制していますが、それの事であると思います。

11、武器、弾薬等を愛護節用せよ。

武士が刀を大切にする心と一緒、という事でしょうか。

これも戦場では大切ですし、もっとマクロ的な見方をするとすぐ壊されたり、使用不能にされたのでは税金、予算がいくらあっても足りない、という事ではないかと思います。

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