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銃剣の成り立ちと変遷

革命的アイディア武器、銃剣とは

ミリタリーが好きな人であれば一度は目にしたことがあるであろう銃剣。簡単に言ってしまえば、銃を槍に変える道具です。

しかし、なぜ飛び道具である銃を、槍として使う必要があったのか、銃剣の成り立ちと変遷を追ってみましょう。

銃剣の成り立ち

銃剣が誕生したのは、17世紀のフランスで起きた農民同士の抗争からだ、と言われています。

当時の銃器というのは前装式という、銃口から銃弾等を装填する方式であったため、装填に大変時間のかかる代物でした。

そのため、最終的には銃を捨て近距離用のサーベルなどで斬り合う戦いになってしまいます。あるとき、農民同士の抗争が起こった時、ある男が何を思ったか、射撃をした後の銃口に手に持っていたナイフを差し込み戦いに参加したのです。

その姿を偶然見ていた軍人が、その発想を生かして作ったのが銃剣である、と言われています。

その為、生まれた土地であるバヨネの名前をとって「Bayonet」になったという逸話がありますが、これは真偽が不明な逸話であり、銃剣が生まれた当時は「Bayonet」というのは平たい短剣をさす言葉で、それを銃剣として使うようになったため銃剣という意味が主流になった。という説の方が有力視されています。

どちらにしろ、銃剣の登場は戦場に大きな変革をもたらしました。

銃剣の役割

当時の銃は上にも書いたように装填に時間がかかるなど性能が良いとは言えず、あくまで陣を組んで相手に近づき、相手の陣を崩すための兵器でしかありませんでした。

そのため、砲兵などと共に敵陣を崩したら槍兵や騎兵などが突撃し、逆に陣を崩された側は敵の突撃から銃兵を守るために槍兵が前に出る、というのが基本の戦いでした。

しかし銃剣が登場した事により、「銃」が槍を兼ねることが出来るようになったのです。

銃剣によって、銃兵は自分の身を守る事もできるようになり、今までは腰にぶら下げていた短剣のみしかなかった彼らが、武器を持って突撃に参加できるようになりました。

ですがその結果、槍兵という存在が戦場からなくなる事になります。

機関銃の登場と銃剣

銃剣の存在は戦場に変革をもたらしましたが、「射撃戦の後、陣が崩れた突撃からの白兵戦(はくへいせん、剣などを持って近距離で戦うこと)で決着をつける」という基本戦術は、その後長らく変わる事はありませんでした。

金属薬莢による射撃速度の向上やボルトアクションライフルが登場したため、方陣を組んで戦うという事はなくなり、塹壕(ざんごう、銃弾から身を守るための溝など)にこもって敵を狙うという戦争に様変わりしました。

しかし、当時の銃器の火力では戦場の大局を決定するには力不足であり、最終的には突撃による白兵戦により決着をつけるという決まり手が必要だったためですが、日露戦争から第一次世界大戦にかけて、その戦術が大きく変わってしまいます。

日露戦争において史上初めて実用的な「機関銃」が大規模に登場したことにより、騎兵や歩兵の突撃する攻撃など、ただの的という状況になってしまいました。

その為、日露両軍とも対策を求められ、安易な銃剣突撃というのは行われなくなっていったのです。

さらに第一次世界大戦では機関銃が主力の戦いとなり、大規模な塹壕戦術に切り替わりました。そのことにより銃剣の問題が露呈することになるのです。

機関銃の登場で戦術が変化したものの、最終的には突撃で決着をつけるという現状は変わらなかったので、こちらからの砲兵やスナイパーにより相手に攻撃し、最終的にはバラバラな散開戦術による銃剣突撃が行われることになります。

そして、相手の塹壕にたどり着いて白兵戦という形になるのですが、ここにおいて問題なのが塹壕という立地条件です。

敵からの攻撃を守る塹壕というのは、広くて数人が並んで歩ける程度であり、狭い所だと人が一人走り回るのもやっとという所も珍しくありません。

そう言った場所において、ライフルの穂先に付けた銃剣というのは長すぎて取り回しが悪く、また塹壕での出会いがしらの戦闘が増えたたため、とても使いにくかったのです。

その結果、鉄パイプや先端を削ったスコップなどで相手を殴打したり、小銃の肩当で相手を殴り殺すなどと言った中世さながらの白兵戦が行われるようになり、銃剣は使えない武器というレッテルを兵士たちから張られることになります。

また、塹壕戦の登場は、野戦での決着から塹壕の確保という戦いになることを表しており、その結果騎兵も戦場から徐々に消えていくことになりました。そのため、元々騎兵による突撃からの防衛の意味もあった銃剣もその意義が一つ減る事になりました。

しかしながら、第二次世界大戦に初期までは、銃剣突撃は武装が整っていない地域であればそれなりに効果をあげることが出来ました。

というのも機関銃というのは大変重く、これを担いで敵陣に突撃するという事が不可能で、敵陣の機関銃や砲を何らかの方法で破壊し、その後銃剣による突撃で残っている敵を排除するなどして、決着をつけるという戦術が取られるようになります。

銃剣にも工夫が施されるようになり、騎兵突撃対策のために長かった銃剣は徐々に短くなり、ナイフとして、短剣としての性能を上げる方針で進化していき、短剣として使えるようになり、銃の性能も進化していたので銃の銃身も短くなっていきます。

逆に第一次世界大戦時に活躍した、鉄パイプやスコップ、トレンチナイフなどの白兵戦用の兵器は消えていったのです。

銃剣の衰退と現在

長きにわたり活躍してきた銃剣ですが、第二次世界大戦中期から姿を消していくことになります。

理由としては個人が携行する兵器の火力が上がった事であり、中期から後期にかけてサブマシンガンや自動小銃の装備が増えるについれ、以前なら白兵戦になった場面でも銃器での撃ち合いで決着がつくようになったのです。

その結果、銃剣は主戦場から姿を消すことになりました。

現在、軍によって銃剣自体を廃止した軍隊もあり、また廃止していなくても訓練の頻度は以前よりも減っている傾向です。

ただ軍隊というのは日常の生活から、突然襲われた際まで「ナイフ」があれば便利な兵種ですし、体力育成の為や士気向上のために、常に訓練は続けられています。

また戦場においても、銃剣突撃が全く存在しないか、と言うと話は別で、滅多に存在はしませんが、現代でもたまに行われることがあります。

ただし、それはその戦場が特異な状態であったという事であり、基本戦術というわけではありません。

例えばフォークランド戦争では、お互いの特殊部隊が塹壕を挟んで手榴弾の投げ合いという第一次世界大戦さながらの戦いを行っていたため、最終的な決着をつける決定打がなかったので、英軍が銃剣突撃を行っています。

しかし、昨今では対テロ対策や室内戦での戦いにおいて、銃剣というのが注目を集めているようです。

つまり、現代でもたまに起こりうる白兵戦においては、銃剣というのはメインで使われる武器であり、今後も技術革新が進んでも、銃剣というものは存在し続けるのかもしれません。

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