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アサルトライフルとバトルライフル

アサルトライフルという銃器のカテゴリを耳にする事がありますが、正確な区分については、かなり曖昧なものになっています。

日本語訳する際には「突撃銃」という表現をすることがありますが、現在、日本国内の公的機関・組織においては突撃銃の名称を使用する事は無く専ら「小銃」と呼称されています。

そもそも日本国内では、アサルトライフルのことを突撃銃と表現するようになったのは、1960年代にまで遡り、当時はベトナム戦争の真っ只中であり、丁度米軍が介入を始めた時期にあたります。

介入を始めた米軍と対峙していたベトコン(=南ベトナム解放民族戦線)を始めとした各武装勢力が用いたAK-47が当時は珍しく、これに関心を持ったメディアが日本へ伝えたことが、突撃銃という呼称のそもそもの始まりであるとされています。

しかし前述した通り、現在では突撃銃という呼称は事実上廃れており、国内であってもカタカナ英語としてアサルトライフルや、漢字表記で自動小銃という名称が多く使われるようになりました。

その一方で日本語の突撃銃という単語を輸入する形になったアジアの国々では、今でも「突撃小銃」や「突撃歩槍」といった表現が使われています。

また、米国の警察機関などでは、「Assault(=アサルト)」が、かなり攻撃的なニュアンスを含むほか、犯罪行為を指す際に○○Assaultという表現をするため、アサルトライフルの代わりに「Tactical Rifle(=タクティカルライフル)」という名称を使用しているそうです。

アサルトライフルと良く似たカテゴリにバトルライフルというカテゴリが存在しますが、これらは似た立場にあり、「基本的には」明確な区分が存在しています。

なぜ基本的なのかというと、稀にコンセプトから逸脱したものが開発されたりすることがあるためです。

両者の区分では「小~中口径がアサルトライフル、大口径がバトルライフル」といった区分をしていることがありますが、正確には両者の違いとしては、バトルライフルは使用弾薬が「フルレングスのライフル弾」であることが条件の一つとして挙げられ、また、必ずしもフルオート射撃が可能とは限りません。

フルレングスの弾薬を使用するため反動は大きくフルオート射撃が可能な機種であり、かつフルレングスの大口径弾特有の大きな反動を抑える工夫がされている場合であっても、フルオート射撃時の制御は難しいとされています。

また、バトルライフルは比較的新しい単語であることもあり「以前はアサルトライフル扱いされてたが、現在はバトルライフル扱い」といった小銃も存在します。

そもそもバトルライフルという単語が発生した原因は、一説によれば米国産の大口径小銃M14と、小口径小銃M16を比較・区別するために作られた単語であるという説もあります。

これに対してアサルトライフルは、使用弾薬が「フルレングスの減装弾」もしくは「薬莢の短い弾薬」を使用する小銃を指し、バトルライフルと違い、多くの場合でフルオート射撃が可能になっています。

減装弾や薬莢の短い弾薬を使用するため、比較的反動が小さくフルオート射撃やバースト射撃をした場合でも、銃の制御がし易くなっています。

また、口径で見ればバトルライフルと同サイズのAK-47がアサルトライフルに分類されるのも、フルレングスではないという点が理由の一つです。
(AK-47の使用弾薬は7.62×39に対してバトルライフルの使用弾薬は7.62×51です)

このように、極微妙にですが、アサルトライフルとバトルライフルには違いがあります。

アサルトライフルが成立した背景には、アサルトライフル登場以前の小銃は、戦闘距離を1km程度と考えて作られていたことが、まず重要なポイントです。

しかし、第一次世界大戦時に実戦投入されたことにより「1kmという長距離で撃ち合うことが無い」ということが判明し、同時に「最大射程距離や威力を多少減衰させても、扱いやすい銃のほうがはるかに有利になる」という点に着目します。

同時にフルオート射撃を可能にし、装弾数20~30発へと増加、個人での運搬・運用を可能にしたものが、現在のアサルトライフルの原型となっています。

近代的アサルトライフルの原型、つまり世界初のアサルトライフルは第二次世界大戦下、ナチス・ドイツが開発・量産したアサルトライフル「StG44」であるとされています。

特徴は前述したように「フルレングスのライフル弾よりも装薬量の少ない弾薬」を使用している点で、射程こそ短くなってしまいましたが、兵士一人当たりの携行弾数の増加や、反動軽減による制御の容易さ、セミオートとフルオートの切替が可能など、まさに近代的アサルトライフルのさきがけと言える存在です。

その後、1949年には「地球上に最も多く存在する銃」とまで言われたアサルトライフル、AK-47が開発されます。

AK-47はStG44とほぼ同コンセプトですが、旧ソビエトらしい堅実な作りになっており、信頼性・耐久性はかなりのものです。

その信頼性・耐久性を象徴するように「泥水に漬けても動く」や「兵士が踏んでしまい歪んだ銃弾でも発射出来る」といった逸話のあるアサルトライフルです。
(更に過激なものでは上部カバーが外れて一部メカが露出しても発砲出来る、なんてものまで存在します)

その後、各国・各社でアサルトライフルの開発が更に激化します。

1954年にはベルギーの銃器メーカー、FNハースタルが傑作と名高いFN FALを開発、1960年には米国でアーマライト・コルトが今なお使用されているアサルトライフル、M16を開発、1964年にはドイツのH&K社では、今ではバトルライフル扱いを受けるG3を開発しました。

この3種に加え前述したAK-47を加え、ほぼ同時期に開発された傑作4つを「4大アサルトライフル」と呼びます。

この4種はどのアサルトライフルも、現在は後継機種が出たり、派生機種が登場しているなど、現在まで使用されているまさに名銃です。

そんな傑作4大アサルトライフルが登場した、少し後1985年にはイギリスのロイヤルオードナンスにより「L85」が開発、イギリスの陸・海・空軍に採用されるという結果を残しました。

性能はプルバップ式などユニークかつ実用的な部分も確かにあるのですが、それ以上に不具合が多く、初期のものは「そもそもチャンバーに弾薬が装填されない」「弾は出るけど廃莢されない」「マガジンが脱落する」「重い」といった不具合の連続や、標準のレイルマウントが独自規格の19mmレイルだったこともあり「弾を撃つことが出来る鈍器」と酷評され、すぐさま改良されました。

最終的には他社製アサルトライフルと同程度の精度と信頼性を得ることが出来、何とか悪評は払拭できつつあるそうで、現在では、アサルトライフル単体での運用のほうか、バレル下部にグレネードランチャーやバレルを短く切り詰めたショットガンを一体化させたモデル等もあり、より効率的な運用を出来るように工夫がされるようになっています。

FN社製のアサルトライフル「FN F2000」のようにアドオン式のグレネードランチャーも開発・装備され、光学照準器やレーザー測距装置、小型のコンピューターによる射手の補助をするといった装備の開発も進められています。

これは、単純なIT分野の進歩だけでなく、アサルトライフル自体の進化は限界に来ているためか、本体の能力をしっかり生かせるように補助的な装置の進化が始まっているという見方も出来ます。

しかし、そういった装置を装備するということはコスト面・重量面からの課題も多く実用化に成功しているものは極僅かとなっています。
(余談ですが弾道計算用のコンピューターをオプションで装備可能な大口径の対物ライフル等は既に存在しています)

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