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戦場での初期治療

2015年2月5日 タスコム ミリタリー雑学

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戦場では怪我や事故がつきものである、不幸にして撃たれたり、怪我をしてしまった時、治療の良し悪し、迅速な初期治療が、その後の命運を分けることになる。

この初期救命、初期治療は日常の交通事故や怪我でも、十分に応用できるもので、違いは普段はそのまま病院に行く、戦場は軽いけがなら、そのまま戦闘を継続する点、一部の特殊部隊では重症であっても外科手術等を施し、たとえ命が助からなくても、死ぬまでの間任務を継続することが求められている。

いくつかの例を挙げ、救急の流れ、処置の方法を説明していきたい。

例1:腕を撃たれて出血している兵士を処置する場合

使うもの ターニケット

まず危険な状況にないか、撃った相手に狙われていないか、敵兵はいないかを確認する。必要があれば安全な所まで運ぶ。

意識を確認する。

「おい、大丈夫か」「はい、なんとか・・・」

意識はあるようだが右腕に貫通銃創をおい出血が激しい。

成人男性の血液量は6リットルであり、その3分の1が失われると失血死するという。

すぐに止血処置が必要だ。

止血法には出血部位をタオルやガーゼで押さえ圧迫する圧迫止血法と、血管の通っている箇所をターニケット等の止血帯で縛り、血流をコントロールする緊縛止血法がある。

右腕の銃創に救急包帯を押し当て、二の腕付近にターニケットをセットして縛り上げた。

徐々に出血量は収まってきた。ただちに中隊本部に連絡し、救急車両を要請して後送する。

ターニケット参考動画

例2:爆破で右ひざから下を失い、大量出血している兵士を処置する場合

使うもの パルスオキシメーター

爆弾が味方陣地付近に落ちて爆発があり、被害者が出た模様だ。駆け寄ると1人の兵士が倒れ、右ひざから下を失ってしまったようだ。

「おい、大丈夫か、交戦できるか!」返事がない、意識がない様子。

「誰か衛生を呼んでくれ!」応援を要請すると共に初期治療、初期診断を開始する。

ABCDに基づき観察する、ABCDとは、

A : エアウェイ(airway)気道は確保されているか
B : ブリージング(breathing)自発呼吸はあるか
C : サーキュレーション(circulation)血液循環はあるか
D : デフィブリレーション(defibrilation)心室細動はないか

である。

まず次弾がこないように傷病者を安全な場所に退避する。

傷病者を移動する際、首や背骨に骨折がないか、注意したい、無理に動かすと神経を損傷してしまう。

A、エアウェイを確保する、下顎を上に持ち上げ気道を確保するか、口の中を目視し、舌が落ちていたり異物がないか、胸は上下しているかを見る。
自発呼吸はあるようだ。

BのブリージングもOKである。

話が脱線するが意識を失っていたり、過度のショック状態だと呼吸しているのか、いないのか、分かりにくいこともある。

そんな時お勧めしたいのがパルスオキシメーターという血中酸素濃度と、脈拍を調べる機械だ。

大きさは5cm×4cm程度の大きさで、指につけると10秒くらいで血中酸素濃度、脈拍を知ることができる。

血中酸素濃度は通常95~100パーセント程度だが、呼吸がうまくいっていないと90を切り、70、80くらいになる。

脈も取れるのでサーキュレーションがあるか、心臓が止まっていないか知るのにも役立つ。価格は1万円くらいでやや高いが、持っておくといざという時助かるかもしれない。

パルスオキシメーター参考動画

次にサーキュレーション、パルスオキシメーターは持っていないので首にある総頸動脈に触れ、鼓動があるか確認する。鼓動もあるようだ。

それらは30秒以内に実施したい。

なぜなら今呼吸や血液循環等の倍たるサインがしっかりしている、という事より一刻も早く処置しないといけないのはひざ下からの出血だ。

すぐに止血帯を取り出し膝の上を緊縛する。傷口にはタオルを当て、圧迫止血を試みる。

幾分出血は止まったようだが、足の欠損は現場では治療に限界がある。速やかに後送するべきだ。

幸いにも数分で救急車両がこちらに到着するという、ただ現場は危なすぎていけないので、後方まで下げてほしいとのことだった。

前全身を検索し、その他大きなけがや異常がないことを確認する。

応急担架を作り数名で救急車両の位置まで後送し、無事載せることができた。

衛生隊員が状況を聞いてきたので、「負傷時の状況、時間、実施した処置」を伝えた。

救急車両は段列地域へと走り去っていった。

例3:撃たれた場合

使うもの チェストシール

一緒に想像しながら、推理しながら読んでほしい。

敵陣地への継続的な応射をしている中、一人の隊員が被弾してしまった。倒れる隊員、「大丈夫か、交戦可能か!?」「ごほっゴボゴボ」意識はあるようだが、呼吸が苦しそうだ。

「隊員が被弾した!衛生来てくれ!!」身を低くして敵弾を避けながらABCDに基づき周りの仲間と診断する。

エアウェイは確保できているが、呼吸の様子がおかしい、AはOKだが、Bができていない。

サーキュレーションはあるようだ。ABCのうちBだけができていないようだ、不思議なことに胴体のどこかを撃たれたように見えるが出血もなく、どこを撃たれたのかわからない。

どう処置したらいいものか、人工呼吸をすればいいのか???

衛生兵が走ってきた「こっちだ、こいつだ!」「撃たれたんだが、どこも撃たれていないように見える、だがすごい苦しそうだ!」衛生兵は総頸動脈に手を触れ脈を確認し、パルスオキシメーターを負傷した隊員の指にはめた。

脈は問題ないが、SPO2、血中酸素濃度が83と異様に低い、うまく酸素循環できていない証拠だ。

「これはもしかして・・・・」そういうと防弾チョッキを脱がし、メディカルシザーで上着を切り裂いた。

全然気づかなかったが、胸には針で刺したかのような小さな傷が見えた。出血もほとんどしていない。衛生兵は「胸部穿通性気胸だ!」と叫ぶと、チェストシールと呼ばれる治療用のシールを取り出し、胸の傷口周辺に張り付けた。

隊員の呼吸は徐々に落ち着いてきた。いったいどういう事なのだろう?

気胸とは胸部に穴が開くことによって、そこから肺に向かって空気が流入し、肺を圧迫して正常な呼吸ができなくなる状態である。肺を圧迫するものは空気や血液である。

チェストシールは1方弁を持った密封性の高いシールで、空気の流入口から肺に空気が入るのを遮断し、また傷口から出る空気を吐き出す事によって肺を正常な状態、位置まで回復するのを補助してくれる。

チェストシールがなければビニル袋とガムテープを用い、ビニルを押し当てその3方をビニルでふさげば一方弁となり、チェストシールと同じ効果が期待できる。

気胸には呼吸困難だけでなく、肺が変移することによって心臓の機能を阻害する緊張性気胸という極めて危険なものもある。

緊張性気胸と判断された場合は緊急の胸腔内の脱気が必要だ。その場合は躊躇せず、わきの下に胸腔減圧ニードルを突き刺し、脱気する事が必要である。

気胸参考動画

例4:熱射病で倒れた場合

これは夏場のスポーツとかでよくあると思う。

わが軍は連日連勝し、意気揚々と戦果を拡大すべく行軍を開始した。

2時間ほどすると機関銃を持ったA一士がフラフラし始め、バタンと倒れてしまった。

「どうした、A一士、大丈夫か、歩けるか?」「もう駄目です・・・」

「衛生、来てくれ!」騒ぎを聞きつけ鬼軍曹の異名をとるB二曹がやってきた。

突然ぶっ倒れたと聞くなり目の覚めるような往復ビンタをA一士にバシバシくらわせ「貴様それでも軍人か!

畏れ多くも血税で作られた機関銃を放り出すとは何事だ!立て!!歩け!」と怒鳴りつけた。

「B二曹、殴るのはよくないですよ、熱中症かもしれません、衛生も呼びました、治療を受けさせましょう」

ABCに基づいて調べるとABCは問題ないが、やや青ざめて息が浅い。

機関銃と荷物をおろさせ服を開放すると共に水をかけ、日陰に連れて行った。熱中症のようだ、無理をさせてはいけない。

青ざめていたので血液が頭部に行くよう、足元をやや高くしてやった。

「すいません、すごいしんどくて・・・」熱中症で倒れたのもかわいそうだが、B二曹に理不尽にビンタされたのもかわいそうすぎる。

間もなく衛生が来て、状況を確認して救急車両に収容、車両内で治療しながら移動という事になった。

熱射病、日射病共に体がオーバーヒートしている状態なのでできる限り涼しい状況を作ってやり、冷却材である水を体にかけたり、飲ませてやるといい。

行軍や炎天下での陣地構築時に多い熱中症だが、根性なしと怒鳴らず治療はしっかりと行いたい。

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