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原子力潜水艦とは

現在、原子力潜水艦はアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国が保有していますが、国ごとの運用や、仕組みが異なります。

ここではアメリカ海軍の原子力潜水艦について詳しく解説していきたいと思います。

原子力潜水艦の原子炉

まず原子炉は、核燃料から発生した熱で水を温めて蒸気を発生させ、蒸気タービンを回転させます。

蒸気タービンを持っているのは発電設備である原子炉はどれも同じなのですが、沸騰水型加圧水型の2つに分類されていて、核燃料からの熱で水を沸騰させ、それでタービンを回すのが沸騰水型です。

一方、水を加圧して100度以上でも、沸騰しない状態で燃料の熱を循環させ、100度以上の水を配管に通し、配管に触れた水を蒸気にして、タービンを回すのが加圧水型になります。

原子力潜水艦の最大の特徴である原子炉は基本的に、加圧水型原子炉を用いています。

加圧水型は沸騰水型とくらべて構造が複雑になるのですが、傾きやすい潜水艦に中でも、核燃料が水に浸り続けるため、効率的な冷却ができるという理由で、加圧水型が利用されているようです。

原子炉の取り扱い上の問題の一つに、制御棒を押し込んで炉を停止させても、しばらく熱が発生し続ける現象があります。

このため、冷却用のポンプを絶えず回している必要がありますが、モーターとディーゼルで動く、通常動力潜水艦は、全機関を停止させて無音で潮流に乗って移動することもできますが、原子力潜水艦は冷却ポンプの運転が必要なため、完全無音にできません

しかし音を構造的に切り離すという技術があるようで、原子力潜水艦がうるさいと言われた時代は過去のものになるかもしれません。

原子炉のメリット

原子炉を使うもっとも大きなメリットとして、フルパワーで使っても燃料がなくなる心配がないことが挙げられます。

このため、バッテリーを使用する通常動力潜水艦と異なり、潜行したまま高速で移動できるのです。

その高速性と燃料が長くもつ航続性能を生かして、攻撃型原子力潜水艦は空母に随伴することもあります。

燃料交換については前述の通り、ほぼ燃料補給を必要としないので、核燃料棒を交換するときは船体を切断して核燃料を交換することになります。

ですが最新のバージニア級原子力潜水艦は船体寿命で退役するまで、燃料交換が必要ないとされています。

余談ですが、空母も同様で、ニミッツ級なども船体切断による燃料交換が必要ですが、建造中の新型ジェラルド・R・フォード級は、退役まで燃料交換不要です。

原子力潜水艦のサイズ

巨大なイメージのある原子力潜水艦ですが、世界最大のロシア海軍のタイフーン型原子力潜水艦でも175m程度です。

自衛隊の最新型そうりゅう型は84mしかないので、確かに潜水艦としては大きいのですが、水上艦と比べた場合、金剛型ミサイル護衛艦くらいしかなく、世界最大のニミッツ級空母の半分程度しかありません。

戦略型原子力潜水艦

原潜のタイプは主に、核兵器搭載の戦略型原潜と、対地対潜装備の攻撃型原潜があって、戦略型原潜は、潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)を搭載して、核攻撃が可能であるということが最大の特徴です。

世界で核戦争が起こらないのは、一度核攻撃が行われると必ず残った核兵器で報復核攻撃が行われるためで、どうやっても当事国は両国とも壊滅するので双方が撃つことができないのです。

これを相互確証破壊と言います。

地上にある固定式の核ミサイル施設だと、場合によっては位置を特定され、無力化された上で核攻撃をされるおそれがあります。

しかし潜水艦に長距離弾道ミサイルを搭載することで、その位置を秘匿でき、確実な核報復ができるようになり、相互確証破壊が成立し、ひいては核戦争発生のリスクが低くなることに繋がります。

他にも、これは潜水艦全般に言えることですが、静音性がどの程度あるのか、というのが軍事機密となっており、そのためスクリューの形状が機密になっています。

これはスクリューの形状を分析されると、どのような回転で騒音が起こるのかが分析されてしまうためで、ロシアの潜水艦の進水式でも、スクリューには布がかけられています。

また、どの程度潜ることができるのかも、機密になっており、意外なことにハッチの厚みから可潜深度を推測できてしまうそうです。

そのため、ハッチの写真を撮ったりすることも、禁止になっているそうです。

核攻撃を潜水艦に指示する場合ですが、映画クリムゾン・タイドでは、本部からの命令の全文が正常に受信されず、核攻撃中止か否かで大問題になります。

現実では、全文が正常に受信されなかった場合にも対応し、命令書は最初の一文字が受信できれば、それが何を示しているのか、分かるようになっているそうです。

攻撃型原子力潜水艦

主に自己防衛のために戦略型原潜も魚雷を搭載していますが、攻撃型原潜は核兵器を積んでおらず、長距離の対地攻撃を可能とするトマホーク巡航ミサイルと、魚雷を多数搭載しています。

この潜水艦は、前述の空母に随伴する原潜で、空母打撃群などで検索するとその編成の中に組み込まれていることがわかります。

空母艦隊の対潜攻撃は、ヘリから魚雷を投下したり、イージス艦の垂直発射機からロケット発射式の魚雷を投射したりします。

潜水艦を空母艦隊に随伴させるのは、、潜水艦の何処にいるか分からないという秘匿性が大きいためで、水上艦は潜水艦に比較すると、目立ちやすく発見しやすいので、敵潜水艦に捕捉される可能性が高いです。

トマホーク巡航ミサイル

トマホーク巡航ミサイルは、ジェットエンジンを搭載し、場合によっては1000km以上の長距離攻撃を可能とします。

トマホーク巡航ミサイルはイージス艦等にも積まれていますが、水上を航行するイージスは敵に発見されやすく、攻撃を受ける可能性が高くなります。

水上艦艇の攻撃力が失われた場合、相手の潜水艦は撃沈するためにも、潜水艦に搭載するトマホーク巡航ミサイルは重要な存在となります。

兵器の搭載方式ですが、戦略型原潜、攻撃型原潜ともに、船体中央部に垂直に弾道弾、または巡航ミサイルを搭載し、魚雷はどちらも艦首に積まれています。

垂直発射装置は、水上艦であれば蓋を開き、その場でミサイルに点火して発射しますが、潜水艦では蓋を開き、圧縮空気でミサイルを格納した筒を海上まで押出し、水面から飛び出した時点で、外殻が割れて中のミサイルが飛んでいく仕組みになっています。

水上艦の発射方式をホットロンーチ、潜水艦の発射方式ををコールドロンーチと呼びます。

発射時にロケットが熱を持っているか、否かで区別するとわかりやすいですね。

戦略型原潜の発射試験で、弾道弾が内蓋を突き破って発射する映像は、なかなか迫力があるので、興味があれば見てみてください。

さいごに

このように原子力潜水艦は、核動力による潤沢なエネルギーを生かして、高速航行や長期潜行などを可能としています。

潜水艦の潜行限界は数カ月で、乗員の精神的な限界を考慮しているようです。

冷却ポンプによる騒音など、デメリットもありますが、最大で2週間程度しか潜れない通常動力艦と違い、長期に渡って何処にいるか分からないというのは、敵にとって大いなる脅威です。

特に興味深いのは、何処にいるか分からない故に、確実に核兵器による報復攻撃ができるという点で、これによって世界平和が、ある程度保たれているというのは皮肉な話です。

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